2005 Fiscal Year Annual Research Report
セーフティ・ファーストをめぐる職業倫理の構築米国における技術文化スローガンの創始
Project/Area Number |
17520559
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Christian University |
Principal Investigator |
金子 毅 東京基督教大学, 神学部, 講師 (30383417)
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Keywords | 文化人類学 / 民俗学 / 宗教学 / 社会学 |
Research Abstract |
助成の初年に当たる本年度は、労働倫理の構築という観点から、「Safety-first」のモデル化に研究の的を絞った。その際、国内外に及ぶ文献の渉猟とその検討を通し、次年度以降の現地調査(デトロイトでのエヴァンジェリカル教会調査)実施の上で核となる理論枠組みと仮説の設定を図った。作業の具体的な概要は以下の通りである。 プロテスタンティズムの世界観から見た「Safety」と「Security」との関連という点である。「Safety」も「Security」も語源的には、ともに聖書的な世界観における中心的な語彙であるが、本研究では、これを聖書に関する米国の註解書や講解書における引用例、さらには語源に関わる辞書類を対象に、「義」「赦し」「恵み」「感謝」「平安」などのキーワードをその使用される文脈との比較を通して、そこからプロテスタント倫理に内在する主体的な「安全」意識構築のモデル化を図った。即ち、人間に内在する弱さを受容するための手段として「Safety」が存在する。だが、その根底には、揺るがされぬ「平安」、すなわち到達すべき目標としての「Security」が横たわる。しかし、そのプロセスを開示するに当たっては、行為者の神への絶対的な「信頼」を前提としており、それは「恵み」の積極的な受容とそれに対する「感謝」と応答という意識的な態度として現出する(この姿勢は、ことにエペソ書等のパウロ書簡や使徒行伝におけるパウロの言行録などに表象する)。これをリスク論に依拠して説明すれば、予め「期待外れの事態をリスクとして想定しつつも、信頼ゆえに却って期待して待ち続けることが可能となる」文化装置が内在すると言えよう。
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