2007 Fiscal Year Annual Research Report
12世紀ドイツにおける法の構造変動の総合的研究-中世中期の王権を中心として
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17530003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西川 洋一 The University of Tokyo, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (00114596)
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Keywords | 王権 / 中世学識法 / 国王宮廷 / ラントフリーデ / 立法史 / 特権状 / 仲裁 / 裁判史 |
Research Abstract |
今年度は最終年度であるので、初期中世から12世紀への法構造の変動に関して、大きな見取り図を描くことに努めた。神の平和やラントフリーデは、個別的合意によって形成され、合意の存在する限りにおいて存立する法という構造を前提としつつも、誓約に参加した者たちに合意のためのある程度客観化した基準を課すことによって、法構造の変動を準備する。とりわけラントフリーデに王国有力者たちが参加したことは、王権と大貴族の間における一般的な法的基準の観念の密度を高めることに資した。また、叙任権闘争以後、とりわけ先進的な司教教会や修道院との関係を維持する聖職者たちを通して、スコラ学的な理論や新しい教会法的な観念が様々な文書領域に入り込む。そのような聖職者たちの登用による宮廷の性格変化、教皇権との対抗の必要、さらには、イタリア諸都市との間の交渉とイタリア人の宮廷における滞在を通じて、ドイツ王権の周辺に、新しい法観念・社会観念が流入する。その中には、立法の実務、特権の効力についての理論、さらには仲裁制度の導入等、学識法的な考え方の影響にもとづくものもあるが、直接的には学識法の影響を示さない国王裁判の枠組や手続の確立も観察されうる。この点は、国王宮廷に集う非専門家たちの法的行動に影響を及ぼすだけに、とりわけ「土着の」法観念、法実務の展開にとって重要な意味を持つ。実際に、13世紀は、学識法的な法観念、法実務の更なる浸透と、このような「土着の」法形式の固定化の二つの方向で、法構造の変化が進むのである。
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