2006 Fiscal Year Annual Research Report
古法から見たフランス民法典の法制史的実証研究-序章を中心として
Project/Area Number |
17530006
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
葛西 康徳 大妻女子大学, 文学部, 教授 (80114437)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 英実 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 助教授 (50303102)
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Keywords | フランス / 民法典 / 序章 / 公布 / 裁判官・裁判所 / 古法・ローマ法 / 立法者 / public |
Research Abstract |
本年度の研究の骨子は以下の通りである。 第一に、フランス民法典のうち特に特徴的な序章を対象として分析を行った。その結果、従来法律中心主義の新しい法制度の枠組みを設定するものと考えられてきた第一条から第六条の規定が、「裁判」「裁判所」の観点から考察すると、むしろ古法からの連続性を確保する仕掛けと考えられ、ここで保存され、法典によって《隠蔽》された裁判官の役割は、EU統合等に伴う近時の国家枠組みの動揺に伴って再び顕在化している、という興味深い現象が観察される。 第二に、法典編纂における「立法者」の役割と観念にっいて、古代ギリシア・ローマ以来の観念との連続面が明らかになった。すなわち、古代ギリシアの立法者ソロンにはじまり、ローマのユスティニアヌス帝を経て、フランス民法典のナポレオンまで続く伝統である。従来、フランス民法典は、理性(自然法)の産物であるとしてその点に妥当性・正統性の根拠が求められるかたちで多くの説明がなされてきた。ナポレオンの強力な指導力が指摘されても、それが古代以来継承された「立法者」観念との関係で論じられることはなかった。本研究では卓越した立法者(法典編纂者ではない)が与えたことを正統性の根拠とする論理を民法典の中に探り、旧制を通じ古代にまで到る連続性の側面を考察した。 第三に、わが国の民法典はBGBに倣ってパンデクテン方式を採用したため、「インスティトゥーツィオーネス(提要)方式」を採るフランス民法典は法の体系としては注目されなかった。しかし近時日本を含む各国の民法典の現代化と再編が試みられる中で、「人の法」を冒頭におくローマ法以来の提要方式が再び注目されている(広中俊雄『民法綱要』)。
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Research Products
(6 results)