2006 Fiscal Year Annual Research Report
政治裁判の法制史的研究-フランス革命期の国王裁判を中心にして
Project/Area Number |
17530008
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石井 三記 名古屋大学, 大学院法学研究科, 教授 (60176146)
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Keywords | 法制史 / 政治裁判 / フランス革命 / 国王裁判 |
Research Abstract |
18年度は、国内外の研究文献とフランス革命期の議会でのルイ16世の国王裁判を中心とした一次資料の収集を引き続き精力的におこなった。フランスではパリ大学図書館所蔵の学位論文などのほか、最新の国王裁判関連の研究文献をあつめることが重要であったが、フランス国立図書館においても一次資料を閲覧・収集することができた。前回の調査でパリ警視庁の古文書室にもフランス革命期の資料があることがわかったので、国王裁判に対する賛成・反対の世論の動向について、当時のリアルタイムでの国王裁判に関する見解に光を当てることができた。その中には、1804年のフランス民法典(コード・シヴィル)の起草にも関わる法律家たち(たとえば、タルジェなど)の存在も判明し、直接的ではないにしろ、国王裁判そのものがフランス近代法の形成に関連することを予想させるものともなっていて、この点についての研究も継続したいと考えている。 フランス革命期の国王裁判の制度面で留意すべきは、この裁判が議会でなされたことであるが、この点について、1788年に成立したアメリカ合衆国憲法の大統領弾劾規定が、政治裁判制度の比較の観点からも重要であることが明らかになった。アメリカ合衆国の議会は二院制なので、合衆国大統領が反逆罪等につき有罪とされるためには、まず下院で弾劾の決議をおこない、上院が有罪無罪の決定をする。フランス革命期の国王裁判のときは一院制だったので、国民公会が起訴陪審のプロセスから審理陪審、そして有罪となれば量刑までを担当することで、裁判手続の点での問題が指摘され、その後のフランスにおける政治裁判制度の組み立てに際して反省材料とされるのである。政治裁判の比較法の視点からのアプローチは、国王裁判が「裁判」であったことを考えさせる上で有益であった。
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Research Products
(2 results)