2006 Fiscal Year Annual Research Report
会社法改正が現行課税規定に与える影響とあるべき企業課税に関する理論的研究
Project/Area Number |
17530022
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
渡辺 徹也 九州大学, 大学院法学研究院, 教授 (10273393)
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Keywords | 法人税法 / 会社法 / 税法 / 組織再編税制 / アメリカ法 |
Research Abstract |
本年度は、『企業組織再編成と課税』という著書において、これまでの研究内容を一つにまとめた。本書の内容について一言でいえば、アメリカ法と会社法という二つの基準軸を用いて、わが国の組織再編税制に関する体系的な考察を行ったものということになる。以下では、(全7章からなる)本書のなかで本研究課題と特に関係する部分を抜き出して、その概要を記すことにする。 本書の第2章「適格要件のあり方および会社法・商法との関係」では、(1)適格組織再編成の要件は企業が効率的な事業形態へ変化していくことを不必要に阻害するようなものであってはならず、その一方で、制度を利用した租税回避についても備えておく必要性と、(2)会社法(商法)と税法の目的が必ずしも一致しないということを前提に、必要に応じて税法独自の視点で制度のあり方を考えることの重要性を説いた。 本書の第4章「株式交換・株式移転と税制」では、アメリカのB型組織再編成と日本の株式交換・株式移転税制とを比較検討した。また、その補論1では、平成18年度改正により法人税法(本法)に規定されるようになった同税制の問題点を指摘し、その補論2では、株式交換等を利用したインバージョン(タックス・ヘイブンへの親会社機能の移転)という租税回避行為を取り上げて、組織再編税制だけでは対処できない問題の存在を示した。 本書の第5章「税法における適格合併の概念」では、日本の税法における適格組織再編成の概念が、会社法に依拠していることの論理必然性について、アメリカのC型組織再編成との比較を中心に再検討した。その結果、わが国の組織再編税制においても、対価を議決権株式に限定すべきこと、一定の非適格資産を許容すべきこと、適格組織再編成の規定が個別的租税回避否認規定になりうること、三角合併を適格組織再編成に取り込むには間接的投資持分継続性の概念が有益であることなどを指摘することができた。
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Research Products
(7 results)