2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530024
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山崎 広道 熊本大学, 法学部, 教授 (50200655)
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Keywords | 不服申立前置主義 / 課税処分の大量性・反復性 / 課税処分の専門性・技術性 / 裁判所の負担軽減論 |
Research Abstract |
平成17年度は、当初の研究計画に沿って研究課題に関係する資料の収集に努めるとともに、わが国の不服申立制度について権利救済手続という観点から、不服申立前置主義の正当化理由が合理性を有するか否かという点について検討した。その結果、不服申立前置を強制することには以下のような疑問点があることが明らかになった。 1.国税の賦課の大量性・反復性について 正当化理由として主張されてきた課税処分の大量性・反復性については、申告納税制度の下での課税処分が申告納税を前提としていることから、その課税処分は補助的な役割を与えられているに過ぎず、課税処分をするについては、個別的な理由があり、個々の納税者に即した税務調査を経たうえで当該処分行われるのであるから、大量性・反復性ということが正当化理由としては十分な説得力をもつものとは言い切れない面がある。 2.課税処分の専門性・技術性について 課税処分の専門性・技術性については、納税者が課税処分に異議を申し立てる場合、課税庁の専門技術的な判断が税法の正しい解釈・適用に適合するかどうか、すなわち課税庁の知識と経験そのものが基本的な争点となるのであるから、課税処分の専門性・技術性を主張しても前置主義を強制することの正当化理由として十分な説得力をもつとは言い切れない面がある。 3.裁判所の負担軽減論について 裁判所の負担軽減論については、係争の事案の内容によっては法令の解釈問題など紛争の早期解決のために直ちに裁判所の判断を求めることが適切な場合も考えられ、そのような場合にまで納税者に不服申立の前置を強制することが合理性を有するかという点について検討する必要がある。また、不服申立と取消訴訟の選択を納税者に認めたとしても、裁判所が訴訟の氾濫に悩まされるかどうかも明らかではないことなどから、両者の選択制にしたとしても、納税者は、それぞれの権利救済制度の特徴とそのもとでの救済の可能性、費用、労力等を総合的に判断して、この二つの争訟制度のいずれかを選択するのではないかということが考えられる。 上記のことから、これまで主張されてきた不服申立の前置を強制する正当化理由については、十分な説得力をもつとは言い切れない面があることが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)