2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530026
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
佐々木 雅寿 大阪市立大学, 大学院・法学研究科, 教授 (90215731)
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Keywords | 先住権 / 集団的権利 / アイヌ民族 / 先住民族 |
Research Abstract |
1 カナダにおける集団的先住権 カナダの1982年憲法は、個人的な権利として人権を保障している「権利および自由に関するカナダ憲章」とは別に先住民族の権利を保障している。この先住民族の権利の中には、先住民族の土地に対する権原のように集団的権利が含まれている。このような内容を含む先住権の根拠は、憲法や条約ではなく、先住民族がかつって現在のカナダを構成している土地のほとんどを所有していた事実、すなわち、先住性に求められている。したがって、先住権の中に集団的権利が含まれる場合、そのような集団的権利は憲法上当然認められることとなる。 2 アイヌ民族の集団的先住権の可能性 日本国憲法に関する多数説は、憲法13条の個人の尊重原理と両立しないことを主な理由として、日本国憲法のもとでは先住民族等の集団的権利は認められないと解する。これに関連するものとして、人権と文化の多様性に関する文脈で、自然としての文化の共同性からいったん個人が解放される必要があり、そのように解放された個人が、自らの意思で選びなおす「共同性」によって形作られた文化が、多元的な単位として擁護に値し、一人一人の個人の選びなおしを可能とする文化が、人権理念の普遍性であったとの指摘がある。また、相当程度に同化をやむなくされ、継続的に同じ土地に集団として居住しているのではなく、マジョリティーの社会の中で混在せざるをえなくなったわが国の先住民族であるアイヌ民族の現状は、アイヌ民族が、集団的権利を不可欠なものと考え、それを行使することができるかといった現実的な問題も提起する。 しかし、従来の法人の人権論からすると、特定の団体が人権を行使することが可能であり、また、従来の財産権論からすると、前近代的要素が多く、集団的権利としての性格を多くもち、かつ、集団的な先住権に類似する入会権や、集団的権利に近い総有形態の財産の所有も憲法上認められることとなる。そうであれば、憲法の個人主義原理が集団的権利を排除しているとの主張は、再検討を迫られ、少なくともその妥当範囲を限定する必要がある。
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Research Products
(1 results)