2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530026
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
佐々木 雅寿 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 教授 (90215731)
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Keywords | 先住権 / 集団的権利 / アイヌ民族 / 先住民族 |
Research Abstract |
1 日本国憲法における個人と団体の関係 憲法13条が個人の尊重原理を規定しつつも、憲法21条が結社の自由を保障している日本国憲法が予定する個人と団体の関係は以下のように解される。すなわち、(1)個人が本来的な人権享有主体である、(2)団体の結成・加入等は、第一義的に個人の選択や決定に委ねられている、(3)個々人の選択に基づいて結成された団体は、その目的に応じて一定の人権を享有し、独自の活動を行う自由を有する、(4)個々人の自律的選択を根拠としつつも、特定の団体が、一定の人権を集団的に行使することが憲法上認められうる、(5)憲法が規定する個人の尊重原理の下においても、個人でいることによってはじめて尊厳性を保持できると常に考える必要はなく、個人にとって何が尊厳であるのか、また、その尊厳性を保つための方法として、個人のままでいるのか、それとも団体に属するのかは、憲法が一義的に規定している事柄ではなく、個人が自由に判断すべき事柄である。このように考えると、日本国憲法の下においても、一定の団体が人権を集団的に享有し、それを集団的に行使することも許されていると解される。 2 カナダにおける集団的権利 (1)集団的な先住権 カナダの1982年憲法第35条は、インディアン、イヌイット、メティスをカナダの先住民族と規定し、これらの先住民族の「現に存在する先住民族としての権利および条約上の権利」を「承認」し、「確定」する。憲法上保障されている「先住民族としての権利」は、先住民族によって享有される権利であり、その主な内容は、(1)土地権、(2)狩猟や漁業権等の権利、(3)自治権等である。漁業権や土地に対する権原のように先住民族としての権利の主要なものは集団的権利である。 (2)その他の集団的権利 カナダの1982年憲法第27条は、「この憲章は、カナダ国民の多文化的伝統の維持および発展と一致する方法によって解釈されなければならない」と規定し、カナダ憲法は多文化主義を憲法上の原理とする。多くの学説は、多分化主義原理の実体的内容の一つとして、集団的文化権や一定の集団的権利をあげる。また、カナダ最高裁の反対意見の中には、上記27条は、民族集団の集団的権利を保障すると解釈するものもある。
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Research Products
(2 results)