2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530035
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
洪 恵子 三重大学, 人文学部, 教授 (00314104)
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Keywords | 国際慣習法 / 国際的刑事裁判所 / 憲法 / ユーゴ国際裁判所 |
Research Abstract |
私の研究課題は「国際刑事裁判権の発展の国際慣習法に対する影響」である。前年度は国際的刑事裁判所で認定された国際慣習法が国内裁判所の判例にどのように影響を与えているかについてカナダの事例を中心に検討したが、今年度は視点を変え、国際的刑事裁判所と国内裁判所の制度的な関係をまず確認した上で、研究を始めた。 すなわち国際社会には国内社会と違って、裁判所間に制度的な上下関係はあり得ず、国際的刑事裁判所の判例の影響はその規範内容に求めるべきである。ところで、国際慣習法については、それをどのようにして、またどの程度国内裁判所で編入するかどうかは、各国の憲法で規定されることが重要である。その態様は各憲法が国際法と国内法の関係をどう捉えるかによるのであり、必ずしも一様でない。しかし国際慣習法である限り、それは裁判所の認定という形で各国の国内法秩序に編入されることが重要であり、この点で国内裁判所がしばしば判決の中で行う外国法の参照とはまったく性質が異なるのである。そうだとすれば、国際的刑事裁判所のこの分野における責任は重要である。しかし国際的刑事裁判所は裁判を遂行する必要性から、それほど詳細な検討なく一定の法規を慣習国際法であると認定する傾向にあることがユーゴ国際裁判所の判例を中心にした検討から明らかになった。これが今年度の研究の最大の成果であるといえる。 次年度は国際的刑事裁判所で認定される国際慣習法の特徴をより詳細に検討し、国際法学の国際慣習法理論のなかに位置づけたい。
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