2006 Fiscal Year Annual Research Report
国際司法裁判所の合法性審査機能の発展とその法的位置づけ
Project/Area Number |
17530036
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
杉原 高嶺 近畿大学, 法科大学院, 教授 (30004154)
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Keywords | 国際司法裁判所 / 安保理決定 / 合法性の審査 / 司法審査 / 国連憲章との適合性 / 勧告的意見 / ロッカビー事件 |
Research Abstract |
冷戦終焉後,国連が新たな活動の局面を迎えると共に,国際司法裁判所も伝統的な国家間紛争の解決といった役割とは別に,国際機構(とくに国連)やその加盟国がとった行動の合法性(legality)の審査という任務の遂行が求められている。たとえば,ロッカビー事件でのリビアによる安保理決定の合法性の審査請求,NATO諸国によるユーゴ空爆の合法性事件,あるいは国連総会による核兵器使用の合法性事件,イスラエルによるパレスチナ占領地における壁建設事件,などがそれである。この新しい司法現象は,国際司法裁判所が国際社会の法の番人としての役割を強化させるべきであるとの期待を示すものとみることができる。本研究は,こうした問題意識から,裁判所に求められている新しい司法機能の意義を明らかにする。昨年度は,この趣旨から主として上記の判例を含む関係判例を検討した。本年度(平成18年度)は,これらの判例の研究を含む海外の論文の分析に重点をおいて調査した。分析対象とした論文は,たとえば,マルテンツク(B.Martenczuk)の「安全保障理事会,国際司法裁判所および司法審査」(1999年),ラウターパクト(E.Lauterpacht)「国際機構の行為の司法審査」(1999年),アランジオ・ルイス(G.Aranjio-Ruiz)「国際司法裁判所規程,国連憲章および安保理決定の合法性審査の形態」(2003年),その他である。検討の結果,学説上では,国家間の訴訟事件で裁判所が安保理決定の合法性を審査しうるか否かについては法的見解の深い対立がみられる一方,国連の機関が勧告的意見の要請という形で加盟国の行動の合法性の審査を求めることは大きな異論がみられないことが明らかとなった。このような相違が生ずる背景理由を含めて,次年度は本研究の最終的な取りまとめを試みる。
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