2006 Fiscal Year Annual Research Report
経済犯罪の法的規制に関する研究-証券取引法及び独占禁止法上の犯罪を中心に-
Project/Area Number |
17530051
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長井 長信 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (90164384)
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Keywords | インサイダー取引 / カルテル / 入札談合 / 経済犯罪 / 経済刑法 |
Research Abstract |
本年度も引き続き、インサイダー取引規制の問題状況の把握に努めるとともに、カルテル・入札談合規制の調査に着手した。 インサイダー取引に関してはとくに、村上ファンド事件が発生したことから、本件の背景と経緯を追い、それが証券市場に与える影響等について若干の検討を行った。また、ドイツに引き続き、フランスにおけるインサイダー取引規制についても調査を深化させた。その結果、フランスにおいては、(1)通貨金融法典において会社関係者等についての規定はあるものの情報受領者の規定がないことから、これらの者については会社関係者の共犯または蔵匿犯(recel)として処罰されうるにとどまること、他方で、内部情報利用COB規則は、会社関係者等から直接・間接に由来する情報をそれと知りつつ保有する者を規制の対象としていること、しかし、この要件の立証が必ずしも容易でないという問題点があること、(2)行為類型として、通貨金融法典において、内部者が、内部情報の公表前に取引を行うか、または行うことを許容すること(推奨行為など)、第三者に内部情報を伝達することが禁止されており、これらの違反行為について自然人および法人に対して刑事罰が科されることなどが明らかとなった。 カルテル・入札談合規制については、まず、わが国の防衛庁燃料談合事件(最決平成17・11・21刑集59巻9号1597頁)について検討するとともに、橋梁談合事件その他の談合事件について分析を進め、わが国における官製談合防止のための論議を再検討した。さらにドイツおよびフランスにおける競争法全体の枠組みとカルテル・入札談合規制の実態について研究に着手し、目下のところ、とくにドイツにおける入札談合罪(ドイツ刑法298条)の導入に注目しつつ、EU諸国における競争法制裁の犯罪化の動向について、その意義を検討しているところである。
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Research Products
(1 results)