2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530085
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
伊室 亜希子 関西大学, 法学部, 助教授 (50308136)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗田 隆 関西大学, 法学部, 教授 (40121884)
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Keywords | 民事法学 / 信託 |
Research Abstract |
預り金の管理者(受任者)が破産した場合に、いかなる要件のもとで、その金銭を委託した者を保護できるか。その解決の法理として、従来は預金債権の帰属というアプローチがとられてきた。しかし、預金債権が委託者と受任者のどちらに帰属するかを決定するだけでは問題が解決できない場合がある。問題解決の手がかりとして、判例は近年、信託法、信託制度を用いることを示唆しているが、いまだ十分な検討はされていない。そして、信託の本場である米国では、建築請負の場面で信託が使われており、弁護士と依頼人の関係は信認関係にあるとされる。 この預り金の信託的管理という問題は、具体的には、1、建築請負の請負代金をめぐる注文者と元請負人、下請負人の関係、2、事件処理のための預り金をめぐる依頼人と弁護士の関係、3、保険料をめぐる保険会社と保険代理店の関係、4、マンション管理費をめぐるマンション管理組合とマンション管理業者との関係、5、顧客の預り金をめぐる顧客とサービサーの関係、等々、あらゆる場面で問題となる。 研究初年度である本年度は、これら具体的な問題ごとに判例を分析し、問題点を検討した。研究代表者の伊室は、民法の立場から、研究分担者の栗田は、民事執行法、倒産法の立場からの検討を行った。 折りしも、信託法が大正11年に制定されて以来、約80年ぶりに全面的な見直しの審議が行われ、平成17年7月15日、法制審議会の信託法部会において信託法改正要綱試案が公表され、平成18年2月8日には、信託法改正要綱が決定された。改正案の提起した新たな問題、特に信託の成立要件は本研究課題にも密接に関連しており、解釈論だけではなく、立法論の観点からも検討を行っている。引き続き、英米法、ドイツ法の比較法の観点も加味して、当事者が信託と意識していない場合にも、救済手段として信託の成立を認める要件、破産の場合の処置を検討していく予定である。
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