2005 Fiscal Year Annual Research Report
空間的投票理論による政党と選挙区との一次元政策空間での位置決めの理論的実証的研究
Project/Area Number |
17530097
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岸本 一男 筑波大学, 大学院・システム情報工学研究科, 教授 (90136127)
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Keywords | Downsのモデル / 空間的投票理論 / 政党政策位置 / 選挙区政策位置 / 国政選挙 / 最大値計算 / イデオロギー軸 / 都市・農村軸 |
Research Abstract |
Hotelling=Downs以来の古典的な空間的投票理論に従い,国政選挙において,政策空間が1次元であるとする.各選挙区での有権者の意見分布が平行移動を除いて同一であり,有権者が自分の意見に最も近い政党に投票するとする.本研究は,政党の政策位置と各選挙区での政策位置が与えられば,各選挙区での各政党の理論的得票数が定まることを指摘し,公表されている実際の得票数のデータから逆にとくことにより,政党と選挙区との政策位置(但し,正確には政党の政策は,政策位置ではなく投票獲得領域)を計算して,選挙結果を分析しようというものである. この計算は多次元空間での多峰性関数の最大化を含んでおり信頼できる計算には時間がかかる.プログラムの高速化を工夫し,総選挙1回の計算について1週間程度かかっていた計算を,1日程度でできるようにした.同時に精度も向上し,当初の最大値の計算値が部分的に改善された.これにより,我が国の過去の国政選挙の計算を実施した.この結果は,多少の変化(最適値の改善)はあるものの当初の試算通り,対立軸がイデオロギーではなく,都市=農村軸にあることが確かめられている.時間的に見ると,都市=農村軸の影響力は,戦前から一貫して増大していることも判明している. 全選挙区での有権者分布をア・プリオリに仮定しているが,本研究の結果が信頼できるものであるためには,結果が分布の変更に関し頑健であることが望ましい.従来の正規分布に加えて,裾の広い分布としてt分布を仮定し計算を行った.この結果,尤度関数を自由度の関数としてみた場合,正規分布をt分布の自由度が無限大となった場合と考えると,尤度が最大となるのは必ずしも正規分布の場合とは限らないが,自由度が2以上の範囲で見る限りは,結果に大きな影響はないとの結果も得られている.
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