2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530115
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
吉岡 知哉 立教大学, 法学部, 教授 (90107491)
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Keywords | スピノザ / ロック / ピエール・ベール / 百科全書 / 政教分離 |
Research Abstract |
1.本研究の目的は、近代ヨーロッパ思想の政治社会構想において、宗教がどのように位置づけられているかを明らかにし、国家と宗教、政治と宗教の関係の再検討をおこなうことにある。平成17年度においては、資料の収集と整理を図る一方で、上記の視点から、古典的著作を読み直すことを課題とした。その際、いわゆる政治思想のテキストのみならず、「非政治的」な著作を視野に入れるように留意している。 2.第1に、スピノザとジョン・ロックをとりあげ、理性の時代と呼ばれる17世紀において政治の問題がどのように宗教と関連づけられているかを検討している。とりわけロックについて、そのテキストにおける聖書への言及の仕方を分析し、理性と信仰とがどのように結びつきあるいは乖離しているのかを考察した。『統治論』においては聖書の記述がしばしば読者の説得のための材料として用いられており、政治的レトリックの問題としても興味深い。 3.これと並行して第2に、フランスにおける事典の項目の比較を行なっている。「事典」という書物の成立自体がひとつの世界観をあらわすものということができようが、ピエール・ベール『歴史批評辞典』、ディドロとダランベールによる『百科全書』、アカデミーの辞書を初めとするフランス語辞典、トレヴーの事典、19世紀ラルース等における宗教関係の項目の分析は、本研究にとって不可欠である。 4.第3に、ユートピア思想における国家と宗教の関係に関する考察を進めている。大航海時代以降にもたらされる非ヨーロッパ世界の情報は、18世紀ヨーロッパにおいて、キリスト教を中心とするヨーロッパ世界の自己反省の契機をもたらすものであったが、この契機は19世紀以降、むしろ見失われていく。政教分離原則が非ヨーロッパ世界に対する見方の変化とどのように関係しているかは、現代世界の諸問題を考察する上でも重要であると考えられる。
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