2007 Fiscal Year Annual Research Report
欧州統合と持続可能な社会構築の実践:EUによる他政策への環境配慮を事例として
Project/Area Number |
17530128
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
和達 容子 Nagasaki University, 環境科学部, 准教授 (30325675)
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Keywords | EU / 環境政策 / 環境統合 / 持続可能な発展 |
Research Abstract |
どのようにして環境統合を実現するのか。方策模索のアプローチは環境統合をどう解釈するかによって変わってくるが、ある論稿に拠れば、概ね4つの見方に分類されるという。第1に、環境ファクターが政策の立案・実行に統合されていく手続きに注目する視点。第2に、行政機関等の権限の有無や権力バランスなど政策決定組織の在り方に環境統合の要を見出す視点。第3に、環境統合に関する価値的側面に注目する視点。まず環境統合を信頼性の高い積極的な目標とするには、高レベルな政治的関与や政治的意思が必要であり、主に政治的な言説における環境統合の位置づけとその推移を扱うことになる。第4に、組み込まれた明示的でない概念や言説が既存政策の目標や根拠をどのように変化させていったのかを理解していこうとする視点。これらの見方、およびそれらによって導かれる環境統合の方策は、排他的でなく、相互に補完的である。環境統合の措置や課題の中には手続きや組織的対応が含まれ、同時にEUの提示する環境統合のための政策枠組み自体がEU個別政策領域や各国政策の新しい変化の要因となっており、すべてが縄の如く編み込まれた持続可能な社会の構成要素を確認することが出来る。 事例として取り上げた開発協力政策においては、上記第3のアプローチにより、欧州委員会の政策文書を追うことによって理念としての環境統合が定着するプロセスおよびその方策・手続き・課題を明らかにした。世界的潮流とも関連付けられる開発協力アプローチの変化と環境重視の高まりの中で、環境配慮は当該政策における重要な位置を占めることとなった。と同時に、開発協力はEU対外政策の一分野と位置づけられるようになり、徐々に地球環境ガバナンスのリーダーシップ獲得の手段的色彩を強くしている。以上を含む事例研究は、以下の11「研究発表」に記されていないが、論稿は準備されており、順次公刊していく予定である。
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Research Products
(2 results)