2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530129
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
日暮 吉延 Kagoshima University, 法文学部, 教授 (30253917)
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Keywords | 東京裁判 / 戦犯 / 戦後日本 / 日本占領 / 国際政治 |
Research Abstract |
本研究は、対日講和条約発効後から1958年の日本人戦犯完全釈放までを対象時期としたうえで、日本人戦犯の釈放をめぐる国際関係を実証的に分析するものである。その目的は、すでに検討を終えた占領期の戦犯釈放に関する知見を基礎として、講和後の釈放に関する日本と旧連合国の政策を仔細に検討し、いまだ不分明な1950年代における日本人戦犯釈放の政治過程に関する諸事実を発掘、解明することにある。 最終年度の平成20年度は、第1に、靖国偕行文庫(東京都)所蔵の『井上忠雄文書』を中心に、一次資料の継続的調査を計画どおりに実施した。第2に、それと並行して、資料・情報の系統的な分析作業を行ない、サンフランシスコ講和条約発効後の戦犯釈放に関する旧連合国諸政府の対応をかなりの程度、解明することができた。 本研究計画の実施によって、裁判後の戦犯処理という従来看過されてきた問題の解明が大きく前進したと考える。国家間の相互作用はもとより、主権回復直後の日本人が戦犯釈放に好意的であったという知見が得られたことも重要な成果であった。ただし、20年度当初に構想していた巣鴨プリズンの戦犯受刑者の動向については手をつけることができなかった。 本研究の成果の一部は、日暮吉延『東京裁判』(講談社現代新書、2008年)の第7章「戦犯釈放はいかにして始まったのか」(315〜356頁)、第8章「なぜA級戦犯は釈放されたのか」(357〜390頁)において公表された。なお同書は、2008年12月に第30回サントリー学芸賞(思想・歴史部門)を受賞している。
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