2006 Fiscal Year Annual Research Report
同盟と核軍縮:日本,オーストラリア,ニュージーランドの市民社会と対米同盟
Project/Area Number |
17530133
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
上村 直樹 広島市立大学, 国際学部, 教授 (50275400)
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Keywords | 同盟 / 核軍縮 / 市民社会 / 日本 / オーストラリア / 米国 / 対米同盟 |
Research Abstract |
18年度は、17年度の予備調査に続いて、オーストラリア(豪州)とニュージーランド(NZ)での本格的な調査研究を行った。豪州ではオーストラリア国立大学戦略防衛研究所で、NZではヴィクトリア大学戦略研究所で再びそれぞれ短期客員研究員として、研究テーマに関して大学や研究所関係者等との意見交換を行い、図書館での文献資料の調査を行ったほか、特に両国政府の軍備管理・軍縮担当、安全保障政策担当、対米関係担当の政府関係者との聞き取り調査を幅広く行った。また反核平和NGO関係者や元政府関係者からも聞き取り調査や意見交換を行った。 今回の調査では、対米政策と核不拡散政策に関して両国の類似点も明らかになった。即ち、米国との同盟上の制約を離れたNZにとっても、9.11テロ事件以来の国際安全保障の構造的変容は無縁ではなく、国連の枠組みにとらわれず、米国主導で強力に進められた各種テロ対策や「対テロ戦争」、更に核の分野での「拡散対抗」政策にNZ政府も同調する傾向を強めている。NZ政府はイラク等への派兵だけでなく、米国主導の「拡散に対する安全保障構想」(PSI)に参加を決めたのである。これは、米国との同盟を最優先し、米国主導の「拡散対抗」政策を重視する豪州への一種の「接近」を示している。しかし、豪州は、更に日本との安全保障関係の強化も進めて、日米豪三国間の安全保障関係の強化を目指すなど、同盟の枠組み重視が続いている。市民社会の政策への影響力に関しても、NZにおいて市民社会の政策への影響力が強いのは確かだが、豪州ほどの多様性に欠ける面のあることも再認識された。一方の豪州は、より多様な市民社会を持つが、強力な軍産複合体も存在し、核軍備管理軍縮への抑制要因となっている。今後、日本との比較を念頭におきながらこうした点を報告書としてまとめていきたい。
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