Research Abstract |
本研究は,自然災害リスクが地価に与える理論的メカニズムをモデル化し,そのモデルから導出されるインプリケーションを水害ハザードマップと地価データから検証し,その実証結果から防災対策に対する政策的含意を導き出すことを目的とする。 具体的には、分析対象として、平成12年の東海豪雨水害の経験,それ以降の公共部門による水害リスク認知の徹底や,新たな地域別防災対策へのコミットメントといったイベントが,格好の自然実験環境を提供している名古屋市を選択し、ヘドニックアプローチを用いながら、地価形成に与える要因を特定化していく。このことにより,水害リスク認知のタイミングや,公的コミットメントの時間的変更・地域格差の影響を受けながら水害リスクが地価形成に反映される過程を実証的に把握することが可能となる。 こうした理論的含意を検証した実証分析を行うことにより,どのような政策的フレームワーク,公的コミットメント,公・民の保険制度を導入することによって,企業や家計の危険回避行動を有効に引き出し,効率的な都市防災対策が実施できるのかについて重要な政策的知見を得ることができる。 平成17年度は,上述の研究を実施するためのデータベースを整備した。また,研究代表者,研究分担者が,共著で,あるいは,単著で,上述の研究に密接に関係する,自然災害リスク管理や地価形成に関する研究論文を公刊してきた。 研究1年目の2005年度は,名古屋市が公表している洪水ハザードマップ(庄内川,新川,天白川沿岸地域)と東海豪雨水害前後の公示地価データを,地理情報システムで活用できるようなデータベースとして構築する作業を完了した。2006年度には,このデータベースを主軸に上述の問題意識で実証研究を行う。また,経過の実証結果については,名古屋市や国土交通省の関係部局の専門家と議論する場を持つ予定にしている。
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