Research Abstract |
前年度の研究成果に基づき,本年度は次のような研究を行った。第一は,白内障の在院日数に関する研究である。我が国においても人口の老齢化に伴い白内障患者が増加しており,眼科手術数が行われている。例えば,平成14年10月時点での白内障患者は約129万人(労働厚生省,2002)であり,また,「社会医療診療行為別調査」によれば,6月審査分の白内障手術の実施件数は平成7年には33,286件であったものが,平成14年には65,864件となっており,年間100万件近くの手術が行われている。このため,在院日数の短縮は大幅な医療費の減少につながる。本年度の研究では,26病院の白内障患者のデータを離散型の比例ハザードモデルにより分析し,患者の特性や処置・手術のタイプの違いをコントロールしても,病院ごとに在院日数に大きな差があることを示し,さらにその要因の分析を行った。 第二は,大腿骨骨折の在院日数と治療成果に関する研究である。我が国では老齢化の進展に伴い大腿骨骨折の患者が増加しており,大腿骨骨折は高齢者が寝たきりとなる主要な原因となっている。本年度は,新たに開発した同時方程式タイプのモデルを使い5病院の患者のデータを分析し,術後感染症,術後合併症の防止や手術後のリハビリなどの重要性を定量的に示した。これらの研究成果は,診療報酬体系の決定等の政策上も大きな意義があると考えられる。 第三は,医療データの計量分析に関する理論研究である。治療成果は質的データであり,在院日数は1,2,.の整数値を取る計数データである。また,治療成果と在院日数は退院という一つの行為で決定されるため,これまでにない分析方法が必要となるが,本年度は,これらの理論的な分析を行い,新たなモデルおよびその推定方法に関する研究を行った。 これらの研究成果は,本年度6編の論文として学術雑誌に掲載されている。また,現在,数編の関連する研究論文を学術雑誌に投稿中である。
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