2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530176
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩本 武和 京都大学, 経済学研究科, 教授 (80223428)
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Keywords | 経済政策 / 国際経済学 / 国際金融 / 資本移動 / 為替レート |
Research Abstract |
本研究の目的は、資本移動が、景気循環や資産価格等の実体経済に対して、順循環的に及ぼすメカニズムを理論的・実証的に分析し、前者が後者に対して反循環的に作用するような制度的枠組みを提言することにある。研究初年度に当たる平成17年度は、主として先行研究のサーベイを行なう過程で、次年度以降の研究に利用可能な理論的枠組みの提示に専念した。経常収支の動学的アプローチでは、(1)現在の経常黒字国から経常赤字国へ、異時点間の国際貸借が行なわれることによって、(2)実体経済における消費の平準化が達成されることが示されるが、(1)については、いわゆる「ルーカスの逆説」[1990]の発表以降、この逆説を支持する実証研究が提出され、(2)については、近年の実証研究では、必ずしもこの平準化命題は支持されていない。こうした理論と現実のギャップを埋めるためには、標準的な資本移動モデルで等閑視されてきた「貸し手と借り手の情報の非対称性」(マッキノン等による「オーバーボローイング・シンドローム・モデル」)と「対外債務がいかなる通貨建てであるか」(アイケングリーン等による「原罪仮説」)という2つの視点を入れる必要がある。本研究の枠組みから言えば、現在日本を中心に進められてきている「アジア債券市場」の育成は、債券市場からの資金調達によって、銀行借入れに特有の情報の非対称性を軽減し、自国通貨建てでの資金調達によって、原罪制約を緩和する試みと位置づけられる。次年度以降は、Kaminsky, G.L., et al.[2004]によって、厳密に定義され実証された、資本移動のプロシクリカリティに関する「4つの定型化された事実」に関して、「原罪仮説」を導入した上で、アジアの新興市場を対象に実証し、「アジア債券市場」の育成について政策提言する予定である。
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Research Products
(3 results)