2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530176
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩本 武和 Kyoto University, 経済学研究科, 教授 (80223428)
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Keywords | 経済政策 / 国際経済学 / 国際金融 / 資本移動 / 為替レート |
Research Abstract |
本研究の目的は、資本移動が実体経済に対して順循環的に及ぼす影響を理論的・実証的に分析し、前者が後者に対して反循環的に作用するような制度的枠組みを提言することにある。最終年度に当たる平成19年度は、本研究のテーマにとって欠くことができない世界的不均衡の持続可能性について考察した。一方で世界の経常余剰の3/4を吸収している米国の経常収支赤字と、他方で日本・東アジア諸国・中東諸国の経常収支黒字の拡大が、資本移動の順循環性を考察する格好の対象であるからである。具体的な研究実績としては、(1)国際経済学会第49回関西支部総会(2007年6月9日:岡山大学)における共通論題報告「米国経常収支赤字の持続可能性」を行い(http://www.e.okayama-u.ac.jp/jsie-west49/Iwamoto-handout.pdf)、(2)「アメリカ経常収支赤字の持続可能性」を公表した。金融市場がグローバルに統合され、クロスボーダーの資産取引が拡大したことに注目する一連の実証研究は、対外資産および対外負債のポートフォリオ構成や建値通貨のミスマッチが、為替レートによる調整過程において「評価効果」を発生させ、アメリカに巨額のキャピタルゲインをもたらすことを実証した。他方、Obstfeld and Rogoffは、アメリカの経常収支が均衡し、現在のグローバル・インバランスが解消するためには、ドルの実質実効為替レートが33%減価しなければならない、というシナリオを示し、「評価効果」によるキャピタルゲインは金利の反転上昇による「金利効果」によって打ち消されることを強調する。本研究では、この2つのモデルを対比し、アメリカの経常収支赤字が、グローバル経済に吊されたダモクレスの剣であるという後者の警告を支持した。
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Research Products
(1 results)