2007 Fiscal Year Annual Research Report
日本社会に適した事業再生の経済学的および社会学的研究
Project/Area Number |
17530187
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
中込 正樹 Aoyama Gakuin University, 経済学部, 教授 (30137020)
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Keywords | 経済事情 / 経済理論 / 社会系心理学 / 危機意識 / 事業再生 / リスク社会 / リスクヘッジ / 人間の認知 |
Research Abstract |
本年度はリスク社会において、経済主体はどのような意思決定を行うのか、さら日本社会の特徴を考えるとどのような追加的問題を分析する必要があるのか考察した。この方法論的枠内で事業再生の問題も考察した。具体的には3本の紀要論文と1冊の著作を完成させた。論文「リスク社会経済学」では、従来の「リスクの経済学」がもつ方法論の制約性を批判した。従来は合理的個人の意思決定を基礎とし、その集計として市場を分析したが、リスクを社会問題として考える主体どうしの相互作用が重大問題となり、さらに個々の主体と言ってもそれ自身が社会的価値観をもつ社会的存在である。その意味で「リスクの経済学」から「リスク社会の経済学」への転換が必要であると論じた。また「なぜわれわれはリスクヘッジに失敗するのか?」の2本の論文は、具体的ケーススタディを基礎として、リスクへの最適対応がうまく行われない理由を分析した。従来はリスクへッジ手段が市場経済ではうまく供給されない諭じたが、デリバティブや事業再生などを考えると、たとえリスクへッジ手段が供給されても、人間の認知的特徴や組織的モラルハザード・危機意識の欠如から、うまくリスクへの最適対応が実現し得ないと言える。日本社会における相互依存的なぬるま湯的組織構造も、リスクへの最適対応が実現し得ないと言える。日本社会における相互依存的なぬるま湯的組織構造も、リスクへの最適対応を阻害する要因であり、リスクへッジ手段の供給の欠落が必ずしも問題というわけではない。われわれはこうした人間認知から生じる失敗を防ぐ制度的処方箋を主張した。さらに著作「経済学の新しい認知科学的基礎」は、科研研究の昨年度までの成果を踏まえ、それを拡張したものである。市場での人間認知の特性を、従来の分析を超えて考えるとき、新しい規範理論としての人間観をどのように立て直したらよいのか、深い方法論にまで降りて考察した。これが新たな方法論的革新への一石になればこの上ない喜びである。
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Research Products
(4 results)