2005 Fiscal Year Annual Research Report
情報の非対称性がある下での非営利組織(NPO)の行動と市場構成に関する経済分析
Project/Area Number |
17530194
|
Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
赤木 博文 名城大学, 都市情報学部, 助教授 (30254270)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲垣 秀夫 四日市大学, 経済学部, 教授 (70159937)
鎌田 繁則 名城大学, 都市情報学部, 教授 (70214509)
森 徹 名古屋市立大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (60134160)
|
Keywords | サービス / 非営利組織 / 情報の非対称性 / プリンシパル・エージェント |
Research Abstract |
平成17年度の研究では、NPOと民間営利企業が共存または混在する市場たついてそれが発生する要因を明らかにし、それをモデルに取り込むことを目標として、その基幹となるモデルの構築を行ってきた。第1段階としてNPOが存在する市場の特徴を把握するため、文献をサーベイすることで分析を展開してきた。論文としては発表できていないが、おおよそ以下のような市場の特性を見いだすことができた。 一般的にNPOの存在理由の一つとして、情報の非対称性があげられる。介護、医療、保育・教育分野はサービス市場である。サービスの特徴として、非有形性のため、購入前にその質を確かめることが必ずしも容易でない。これは情報の非対称性を伴うことが分かる。 これに加えて、NPOの存在する市場として、医療に関してはその専門性の高さのために、医師と患者に情報の非対称性が生じ、供給者に意志決定の多くを委ねることになる。情報について優位性を有する供給者は量やサービスの質を低下させ利潤を増加させようとする誘因を持っている。このため、いわゆるNPOであるならばそのような誘因を持たないと需要者は考え、NPOが供給者として好まれる傾向が出てくる。一方、介護や保育サービスはそのサービスの専門性ではなく、サービスの需要者(要介護者やこども)とサービスの依頼者(家族やこどもの両親)が異なるというサービスの性質を持つので、サービスの量や質について供給者と依頼者との間で情報の非対称性が生じる。NPOが供給者として好まれる傾向が出てくるため、通常のサービス市場とは異なる。すなわちNPOの存在する市場は情報の非対称性に起因するプリンシパル・エージェント問題として捉えることが可能であるが、NPOの存在で情報の非対称性が解消されず、むしろ別の問題(本来営利企業であるがNPO市場の特性を利用した悪質な業者が存在しうる余地が発生)が生じることを見いだした。
|