Research Abstract |
本年度は,最終年度に当たり,今までの基礎的、論理的考察と収集した資料に基づいて,実際に共生度を測定することを試みた。まず,生産技術の共生度について,一般的考察と測定を行いこの判定にもとついて,筑後川流域における事例について評価した。この事例として,大川の家具オートメーション工場,手作り家具工房,小鹿田の窯元,上陽の水車による線香の原料製造所を選んだ。この4つを選んだのは,これらは筑後川流域における代表的な地場産業であること,およびその生産工程が自然共生度との関係において,それぞれが特色をもつものであるからである。それぞれについて,生産工程の性質,志向,こだわりなどから自然共生度を判定した結果,順次,D,BとCの間,BとCの間,Cとなった。ただしいAからEの5段階で,AからEになるほど,自然共生度の範囲として自然適応型から自然征服型になる。すなわち,μはゼロから1に近づく。次に,この測定した自然共生度と資本係数やエネルギー消費割合,それに自然素材の利用率などとの相関関係を求め,推計メンバーシップ関数の推定を行った。推定メンバーシップ関数は,生産工程についての性質,性向,こだわりなどから自然共生度を推定するのが困難な場合(例えば,個々の技術ではなく,産業全体の自然共生度),逆に資本係数やエネルギー消費割合等の変量から,自然共生度を推計するのに使用できる。この推定メンバーシップ関数から,筑後川流域全体の自然共生度の推計を試みた。
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