2007 Fiscal Year Annual Research Report
金融政策・インフレ環境の変化と為替レートの物価浸透率
Project/Area Number |
17530205
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤井 英次 University of Tsukuba, 大学院・システム情報工学研究科, 教授 (20321961)
|
Keywords | インフレーション / 金融政策 / 構造変化 / 為替レート |
Research Abstract |
為替レートの物価浸透率(exchange rate pass-through,為替レートが1%変化する結果生じる国内物価の変化率)は国内経済と国外経済との繋がりを体現する重要な係数であり、その値は開放経済の理論モデルの妥当性や現実の経済政策の有効性を考察・評価するにあたって極めて大きな意味を持つ。本研究では金融政策やインフレーションを始めとするマクロ経済環境の変化と為替レートの物価浸透率の関係に関する所謂Taylor仮説の正当性を実証的に検証することを目的とする。具体的な検証事項は以下のとおりである。 1.ブレトンウッズ体制崩壊後今日までの間に多数の先進国において実際にインフレーションプロセスに重要な構造的変化があったのか、またそのような変化は何時何回生じたのか。 2.実際に重要な構造的変化が見られた場合、それらは各国の金融当局による政策変更の結果として達成されたものなのか。 3.インフレーションプロセスの構造的変化が(金融政策の改善によって)もたらされた事に呼応して為替の物価浸透率もTaylorが主張するように実際に有意に低下したのか。 このうち今年度については第二段階の分析の仕上げと、第三段階分析の遂行、さらに研究計画の総括を行った。具体的には実証結果から、OECD加盟国のうち、1980年代、1990年代に複数のインフレーションプロセスの構造変化を経験している国々においては、これらの構造変化に先立ってインフレーションターゲッティングに代表される、金融政策の重要な変化が見られることが判明した。さらに、インフレーションプロセスの構造変化の時期を境に、為替レートの物価浸透率は統計的に有意に低下しており、金融政策の改善が良好なインフレ環境を生み出した結果、為替レートの物価浸透率が低下したとするTaylor仮説を支持する結論に至った。
|