2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530232
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
板谷 淳一 北海道大学, 大学院経済学研究科, 教授 (20168305)
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Keywords | 微分ゲーム / サブゲーム完全均衡 / 社会紛争 / パレート最適 / 略奪活動 / 非線形マルコフ戦略 |
Research Abstract |
本研究は、微分ゲームを適用して、社会紛争を分析するための動学モデルを構築した。各社会構成員(プレーヤー)が無限期間にわたり自らの最適化行動を決定すると同時に、他のプレーヤーと異時点間の相互依存関係を考慮して戦略的に行動するような状況を分析した。本研究は以下の特徴および結果が得た。 (1)他のプレーヤー(社会構成員)が過去にプレイしたすべての戦略に関する情報に基づいて、各プレーヤーが最適戦略を決めるようなモデルを考えると、戦略構造があまり複雑になりすぎて、分析が困難になると予想されるので、本研究ではマルコフ戦略に限定して分析を進める。 (2)従来の微分ゲームの分析では、二次形式の目的関数を仮定して、線形最適戦略を導出してきた。しかしながら、最適戦略を線形戦略に限定するのは経済的な理由はなく、数学的な分析を容易するためのものである。本研究では、これに対して、非線形マルコフ戦略を分析する。この拡張により、各プレーヤーはより柔軟でかつより望ましい戦略を選択できるようになる。また、本研究では、目的関数が二次形式ではないので、線形戦略が存在しない可能性があるが、略集合を非線形マルコフ戦略への拡張することによってこのような困難を回避できる。 (3)Hirshleifer(1991, 1995)やSkaperdas(1992)らによる社会紛争に関する分析は、他人の財産を力ずくで奪い取ることができるような仮構的な無政府状態を想定して、利己的かつ合理的な社会構成員は限られた資源(たとえば、時間制約)を所有して、その資源を他人の資源の奪取活動あるいは自らが生産物を生み出すような生産活動の2つのオプションに配分するようなモデルを構築した。Grossmann(1991)はさらに、自らの生産物を他者からの略奪から守るための防衛活動も導入した。彼らの分析結果は、そのような社会において、長期均衡が完全に平和な状態あるいは戦争状態ではなく、一定の資源をコンフリクト活動および奪取活動の両方に同時に投入するような部分的な平和状態になることを示した。彼らのこの結論は静学モデルから導き出されたものであるが、われわれの微分ゲームを用いた動学モデルにおいても、状態変数の定義域の限定しない場合、大域的な非線形マルコフ戦略が一意的な線形マルコフ戦略に一致して、長期均衡においてやはり部分的な平和状態が実現することを示した。 (4)次のような比較静学結果を得た。略奪活動の生産性の向上および社会構成員の人数の増加は、長期均衡およびそれに至る経路のパレート最適から乖離をもたらすが、逆に、共有資源の減価償却率の増加および社会構成員がより長期的な視野を持つ場合、長期均衡およびそれに至る経路がパレート最適に近づく。
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Research Products
(2 results)