2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530235
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 伯朗 Tohoku University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (10263550)
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Keywords | 福祉国家 / 制度派経済学 / 非営利組織 / ドイツ |
Research Abstract |
最終年度である本年度は、これまでの制度理論のサーベイをふまえて、福祉政策に適合的な理論モデルの構築と、日本およびドイツを中心としたその実証を試みた。 具体的には、高齢者福祉に関して租税資金から社会保険という同一のプロセスはあるものの、上級政府からの一般補助金によって対応しているドイツと、特定補助金中心の日本の違いが生じる理由を、システム理論における制度化のプロセスの説明を手がかりに、両国の医療保険、公的扶助の制度の展開を追うことによって考察した。その結果、ドイツにおいては医療保険においても救貧事業においても、特定補助金を受けないという意味での財政的独立性と運営における自治を備えた組織が自発的に形成されるという特徴が見られることが分かった。これは、制度理論における「社会的差異化」の表れともいえるものである。それに対して、日本においては、健康保険組合による医療保険や地方団体による公的扶助は最初から国庫負担を伴って成立し、それらの団体の運営の自主性や財政的独立性はみられないことが明らかとなった。そして、かかる違いをもたらす根本的な要因として「補完性原理」の有無が関係していることがわかった。 この研究については、書籍『新しい自主財源論の探究』の中で、「医療福祉における財政構造の日独比較」として掲載された。 さらにこの研究プロジェクトでこれまで研究してきた、政府でも市場でもない「サードセクター」に関して、その経済システムにおける位置づけや、主要国における税制や補助金を通じた政府との財政関係の実態分析と考察を行った。
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Research Products
(1 results)