2005 Fiscal Year Annual Research Report
効率的な倒産処理手続きに関するミクロ経済理論による分析および実証分析による検証
Project/Area Number |
17530240
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
廣瀬 純夫 信州大学, 経済学部, 講師 (60377611)
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Keywords | 企業金融 / 倒産処理法制 / 事業再生 / 債権放棄 / イベントスタディ |
Research Abstract |
メインバンクが取引先企業の倒産によって被る影響に関する実証分析 破綻の危機に瀕した企業を大口与信先とする銀行は,倒産処理を行って貸出損失を確定してしまうと,銀行自身が経営危機に直面する恐れがある.このような事態を予想する銀行経営者は,倒産処理を躊躇し,抜本的な再建には結びつかない不十分な債権放棄を実施して延命措置を図ろうとする.このような,銀行自身が危険にさらされている構図は,債権放棄に関する交渉の場で,債務者企業の交渉力を強化する可能性がある.このような可能性についてイベント・スタディの手法を用いて検証を試みた.結果は,メインバンク自身の自己資本額に比してリスク・エクスポージャーが高い貸出先では,債権放棄要請を行ったタイミングで債務者企業の株価は有意に上昇する一方,メインバンクの株価は有意に低下している.つまり市場は,メインバンクにリスク転嫁を図る形での問題先送りの債権放棄が行われ,債務者企業の株主を利する合意に達すると予想しているものと考えられる. 成果:「銀行のエクスポージャーと債権放棄における企業銀行間交渉:イベント・スタディによる検証」 倒産処理法制改革の影響に関する実務家へのヒアリング調査および経済理論による論点整理 倒産処理法制は,2000年4月の民事再生法施行を皮切りに抜本的制度改正が実施された.事業再生促進の観点から効率的な倒産処理法制の整備を求める声を受けた改正の結果,法的手続きを利用した事業再生は着実に増えている.倒産処理関連法制は,債権者の権利を制約する様々な規定が設けられているため,その規定変更は,倒産処理関係者のインセンティブを変化させ,法的手続きに臨む姿勢も異なってくることが影響している.本稿は,大きな変革を経験した倒産処理現場の状況を把握するため,金融機関や事業再生ファンド,弁護士,会計士など今日の倒産処理実務の現場に従事する専門家へのヒアリングを実施し,倒産処理の現場で生じている問題について,可能な範囲で論点整理を行ったものである. 成果:「倒産処理法制の機能と企業金融上の諸問題に関する再検討:企業再生促進の観点からの考察」
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Research Products
(2 results)