Research Abstract |
倒産処理法制の変革が,債務者企業の行動に与えた影響についての実証分析による検証 1.民事再生法導入の結果,事後的な効率性が改善された可能性についての検証 DIP制を認めるなど,債務者側に有利な法制度を用意することは,企業価値が著しく毀損する前に倒産処理手続きを開始するインセンティブを与えるなど,事後的な効率性改善に寄与する可能性がある.この点を検証するため,法的手続き申請のタイミングでのメインバンクの株価に着目したイベント・スタディを行った.法的手続き申請は,民事再生法施行以前ではメインバンクの株価に対して有意にマイナスの影響を及ぼしていた.一方,民事再生法施行以降には,株価へのマイナスの影響は観察されなくなる,さらに,金融庁による銀行検査厳格化が図られる2001年度後半以降では,メインバンクの健全性に影響を及ぼすような大口貸出先に限ってみれば,有意なプラスの影響に転じている.つまり,早期の倒産処理手続きを促したことによる効率性改善の効果は,監督当局による対銀行政策の厳格化とあいまって,主要債権者であるメインバンクにまで及んでいる可能性がある. 成果:「倒産処理法制の改革と金融システム:企業破綻処理に関する政策が貸出市場へ及ぼした影響について」 2.民事再生法導入の結果,法的整理による倒産処理実施の可能性が高まったことの検証 民事再生法の導入の目的の一つは,法的整理による倒産処理が積極的に活用されることにあったため,法的整理が活発化すると市場が予想していた可能性がある.民事再生法による倒産処理手続きでは,株主に対しては減資という形で損失負担を求められる可能性が高い,従って,民事再生法導入によって法的整理が行われる可能性が高まったとすれば,近い将来に倒産処理が行われる可能性が高いと市場が認識していた企業は,民事再生法導入のタイミングで相対的な株価低下を経験しているはずである.そこで,民事再生法が施行された2000年4月以降に倒産した企業を対象にして,民事再生法の法案策定期間中の株価変化に関する日次株価データによるイベント・スタディによって検証を行ったところ,法案がまとまってから施行に至るまでの期間に,有意な株価低下を確認することができ,仮説を支持する結果となった. 成果:「破綻法制・事業再生の制度設計:経営者交代のインセンティブ問題」
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