2007 Fiscal Year Annual Research Report
社会保障財政の新展開-地域間所得再分配と資源配分システムとしての医療・介護制度
Project/Area Number |
17530248
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
安部 雅仁 Hokusei Gakuen University, 社会福祉学部, 准教授 (90285544)
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Keywords | 社会保障 / 医療制度(医療保険システム) / 介護制度(介護保険システム) / 所得再分配 / 地域(地域の経済と財政) / 高齢化・少子化 / 公共事業 / 地方交付税 |
Research Abstract |
本研究の目的は、わが国の経済と財政の動向を踏まえ、高齢化が進行するなかでの社会保障、とりわけ医療と介護制度を通した「地域間の所得再分配」機能について考究することにある。 これまでの経緯を概観すれば、わが国では経済成長の過程で地域間の経済格差が広がることとなったが、これを是正・解消する上で地方交付税と公共事業を通した地域間の所得・資源配分が一定の役割を担ってきた。しかし近年(1990年代後半以降)では、これらの財政政策が抑制される傾向にあり、これが地域の経済停滞と財政悪化の一因にもなっている。 こうしたなかで、医療・介護といった社会保険制度が従来の財政機能を代替するものとなりつつあり、とくに高齢化が進行する地域においては、これが重要な「財源流入ルート」の一つになっている。経済・財政的にいくつかの制約があるなかで、こうした社会保障財政がわが国の経済・社会においていかに展開され、どのような効果が得られるか(あるいは期待されるか)が重要なテーマにもなっている。 こうした問題意識のもと、地域の経済・社会と福祉の各機能、そしてこれを支える財政を把握する上で、平成19年度はいくつかの地域を対象に調査を行い「社会保障財政の構造と機能」について考究した。そのなかでもとくに、北九州市や高知市および札幌市は財政状況が厳しく経済が低迷するなかで高齢化が進んでいる一方、医療・介護を中心とする社会保険制度が所得再分配システムとして重要な役割を担っているとみることができる。 すなわちこれらの自治体では、財源(租税と保険料による財源)の流入額がその流出額を超過しているが、これに関する要因の一つは医療と介護の提供体制が他の地域(たとえば横浜市など)に比べ整備されており、患者・要介護者の利用状況(平均在院日数や受診率、介護施設利用率など)が高いことにある。 現在(平成20年4月)は、科学研究費補助金の交付期間が終了した段階であり、そのまとめとしての資料(報告書)を作成している。
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