2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530263
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
金井 雄一 Nagoya University, 大学院・経済学研究科, 教授 (30144108)
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Keywords | 経済史 / 金融史 / イギリス経済 / ポンド / ロンドン金融市場 / ユーロ・ダラー / 国際通貨体制 / 第二次大戦後 |
Research Abstract |
今年度は研究目的のうち、特に戦時期における国際収支の見通しとブレトン・ウッズ会議におけるイギリスのスタンスとの関連の究明に集中した。そして、The National Archive:Public Record Office等々での資料調査により、以下の諸点を確認することが出来た。 まず、戦後の国際収支困難は開戦後のかなり早期から意識されており、また、戦後の国際通貨体制に関する、いわゆるケインズ案の作成もかなり早期に始まっている。また、実態は心配されたとおりに進行しており、イギリスとしては「国際清算同盟案」的な制度を追求するしかなかったのである。ではそのイギリスがなぜ「ホワイト案」を受け入れたのだろうか。通説の一つはジェントルマン資本主義論的な理解であるが、これは理念的なレベルでの説明にはなりえても当時の見通しや実態から考えると無理があると言わざるを得ない。むしろ、イギリス大蔵省やイングランド銀行の文書からは、「ホワイト案」を本気で受け入れていない、あるいは実際の運用に入るまでには未だ交渉の余地がある等々と考えていた側面が浮かび上がってくる。さらにもう一点の問題として、IMF協定第8条に関してケインズが「誤解」していたという論点もある。いずれにせよ、イギリスは為替管理権を放棄する気はなかったと見なすのが自然であろう。もっとも戦後の現実は、第8条の運用が問題となる方向ではなく、双務的な方向へ動き出し、英米金融協定が結ばれ、マーシャル援助が行なわれ、EPUが創出されていく。 このようなことを確認すれば、第二次大戦後のポンド衰退過程の解明にとっても戦時期の動向を正確に把握しておくことが重要であると分かるだろう。
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Research Products
(2 results)