Research Abstract |
1 デジタル情報家電製品においては,新しい製品技術の市場立ち上がりから比較的短期間に,かつ国内ばかりかグローバルに,製品技術のキャッチアップ,競合企業の参入が進む。その背後には製品技術のモジュラー的特質がある。その帰結は,価格下落スピードがかつてなく速いこと,および製品市場規模が予測を超えるスピードで拡大すること,この二つである。 2 この市場的,技術的環境はデジタル情報家電に独特であり,この環境条件に適合する企業行動をとれない企業は,価格下落スピードに立ち遅れ,新製品技術開発で先行していたとしてもその開発投資を回収できず,技術的差異化戦略の継続自体が困難になる。しかし逆に,製品開発スピードの迅速化,量産立ち上げスピードの迅速化,しかも国内から海外市場向けへと順次立ち上げるのではなく迅速かつ同時に量産を立ち上げる世界同時立ち上げの実行,急速な市場拡大に後追いする生産能力拡大ではなくグローバル市場の拡大を先取する投資行動をとるならば,モジュラー製品においても,日本企業の製品技術差異化戦略は有効であり,開発投資の早期回収,利益実現,ブランド強化,競合企業参入抑制,次世代技術開発投資の,好循環を追求可能である。 3 このような「時間軸の竸争力」を構築する上では,水平分業型ビジネスモデルに傾斜するのではなく,垂直統合によるセット部門とデバイス部門の開発ターゲット・ロードマップ・技術情報の共有が有効であることを事例研究によって確認した。また,製品開発と製品製造部門の垂直的な組織的連携が迅速な新製品量産立ち上げに有効である。 4 デジタル情報家電において製品開発スピード,製品機能の進化,製造原価低減,製品小型化,省電力化を左右する重要デバイスとしてシステムLSIがある。このシステムLSIとこれを組み込む製品開発の間の垂直的連携が,デジタル情報家電の時間軸の競争力構築に有効であることを確認した。
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