Research Abstract |
小売業態の国際移転の伴う業態変容のメカニズムについてモデル化を目指すため,その予備的考察として,社会学・文化人類学の文化変容に関する既存研究を援用しながら,小売業態の国際移転に伴う変容過程のモデル化について検討した。なお,その変容過程としては社会的な過程と組織内の過程が考察しうる。今年度は国家社会水準の社会的な変容過程に焦点を当てて検討した。 まず,社会学・文化人類学において議論されてきた文化触変(acculturation)に関する既存研究をレビューした。これは複数の文化の接触において,一つの文化そのものの変容や,流入した異文化要素の変容を扱っている。流入した異文化要素の社会的な変容過程を扱っている異文化屈折理論をレビューした。 既存研究のレビューの後,試論的に,小売業態の社会的変容過程のモデルを案出した。その過程は,次の段階からなると考えられる。小売業態流入,フィルター通過,小売業態変容,小売業態受容である。これらのうち,とくにフィルターが小売業態を変容させる重要段階であるとして,その概念を検討した。フィルターに含まれる環境要因(流通チャネル,経済基盤,社会,法・政治,自然),環境要因の影響を受けて小売業態実現の当事者(小売業者)が実施する変容の操作(脱落,添加,置換,融合,修正,転換,変身)がその検討内容である。 なお,本研究は基本的に文献研究であるため,作業としては,関連図書の渉猟のほか,日本および海外の関連学術雑誌の渉猟を行った。また,スーパーマーケットの変容に関する基礎的検討のため,スーパーマーケットに関する現地調査も行った。
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