2007 Fiscal Year Annual Research Report
地方財政制度の改革に対応した地方公共団体における財務会計・報告モデルの構築
Project/Area Number |
17530333
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大塚 成男 Chiba University, 法経学部, 教授 (20213770)
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Keywords | 公会計 / 地方公共団体 / 地方財政分析 / 財務会計 / 自治体経営 / バランスシート / 行政コスト計算書 |
Research Abstract |
今年度は3年間の研究期間の最終年度であるため,実地調査により追加的な資料を収集するとともにこれまでの実地調査の結果を再検討し,地方公共団体における財務会計改革で重視されるべき財務情報の利用者と新たな財務会計制度が提供すべき情報を明確にすることを目指した。 今年度の追加的な資料の収集は高松市と吉井町で行った。高松市では同市が実施している施設別行政コスト計算書に関する詳細な資料が得られ,吉井町では同町が試みている財政運営上の改革について担当者と踏み込んだ意見交換を行うことができた。そして,それらの実地調査の成果と前年度までの実地調査の成果から,ストック情報(バランスシート)や収支情報とは異なるコスト情報(行政コスト計算書)の有用性が確認できた。ただし,地方公共団体の財務会計制度の改革では,地域住民を主たる情報利用者とするよりも,自治体内部の現場担当者を最も重要な情報利用者として位置付けるべきであることも明らかになった。また,団体の全体的な状況よりも,それぞれの団体の中で実施されている個別的な事業を評価するための情報が必要とされている。それゆえ,新たな財務会計制度では事業別の財務情報の作成が重視される必要があり,団体全体としての財務情報が作成されるだけでは実効性のある財務会計改革とはならない危険性があることが判明した。 本研究を通じて,地方財政や自治体経営の効率化を図るうえでは,財政分析に基づく評価を行うという手法を自治体の内部に普及させるための財務会計改革を進めることが必要であることが明確になった。公的部門において単なる企業会計の模倣ではない財務会計改革を進めるための手がかりが得られた点で,本研究には意義がある。
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Research Products
(3 results)