2006 Fiscal Year Annual Research Report
グロバール資本市場における会計基準の世界統合の意義と日本の選択に関する研究
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17530340
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
椛田 龍三 大分大学, 経済学部, 教授 (60185965)
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Keywords | 古典的・真実利益アプローチ / 意思決定・有用性アプローチ / 収益費用中心観 / 資産負債中心観 / 概念フレームワーク / 原価と時価 / 純資産 |
Research Abstract |
「グローバル資本市場における会計基準の世界統合の意義と日本の選択」という研究課題を達成するためには、世界的レベルでの会計理論・制度に対するアプローチの変容に着目する必要がある。すなわち、現段階での会計理論・制度に対するアプローチは、古典的・真実利益アプローチから意思決定・有用性アプローチヘ重点シフトしようとしている。そこで昨年(平成17年度)は、古典的・真実利益アプローチと意思決定・有用性アプローチの論理的な特徴を解明するために、米国における1930〜1960年代の重要文献を再検討した。平成18年度は、ひきつづき米国における1960年代の重要文献、すなわちエドワーズ=ベルの会計理論を再検討した。分析の結果、エドワーズ=ベルの会計理論は、経営者の意思決定は提示しているが、基本的には古典的・真実利益アプローチに立脚した資産負債中心観と収益費用中心観が併存した、二元的利益概念を提示していた。彼らの理論は、原価・時価混合主義を特徴とする現代会計にも一定の影響を及ぼしたものと理解している。また、会計における概念フレームワーク-会計基準設定のためめ理論-に関して、日本、国際会計基準審議会(以下、IASBと略称)および工ASBと米国の財務会計基準審議会(FASB)の共同プロジェクトの草案を検討した。分析の結果、日本とIASB等の概念フレームワークの内容は、類似点もある-意思決定・有用性アプローチを採用-が、会計情報の質的特徴や財務諸表の構成要素が部分的に違点していた。すなわち、「内的な整合性」概念や「純資産」概念の内容は、IASB等の規定内容と一定の距離をおいた内容になっていた。このように、概念フレームワークの重大局面での相違点は、会計基準の世界統合にも影響する。 さらに概念フレームワークと会計基準の論理的整合性の問題が検討されたにれに関しては、椛田龍三[2007]「第12章 ストック・オプションの会計」椛田龍三・由井敏範編著『現代会計学と会計ビッグバン』森山書店、2007年6月発刊予定を参照)。ここでは、FASB、IASBおよび日本のストック・オプションの会計基準と概念フレームワークの関係は、論理的な整合性があるとしながらも、ストック・オプションの会計基準に関して、FASBとIASBはほぼ同一の内 容であるが、日本の会計基準はこれらと大きく異なっていることを指摘した。つまり、FASBとIASBは、ストック・オプションを資本と規定しているのに対し、日本は、それを純資産の部における株主資本以外の項目と規定しているのである。ここでわが国は、IASBが主張する会計基準の世界統合の流れを部分的に受け入れていない。したがって、今後、わが国の会計基準設定の方向性は、会計基準の世界統合の流れを受容しながらも、場合によっては日本独自の会計基準を設定し、会計基準の「相互承認」を目指す場合もでてくるものと推察される。しかし、この「相互承認」が可能か否かは、今後の大きな課題であろう。
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Research Products
(2 results)