2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530356
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
樽本 英樹 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 准教授 (50271705)
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Keywords | 国際移民 / 国家主権 / 市民椎 |
Research Abstract |
本研究は、マクロ的志向を持つ国際移民論・エスニシティ論研究者が論争を繰り広げている「国際移民による『国民国家に対する挑戦』」のうち、国家主権の衰退に関して検討を加えていった。論争が決着しない最も大きな理由は、国家の複雑な政策的対応を把握できていないことである。そこで、ハマー=小井土=樽本モデル(HKTモデル)をつくり、移民市民権政策を5つの境界で把握できるようにした。すなわち国家は、非合法移民、一時的滞在者、デニズン、二流市民、一流市民をつくり出りつつ、移民市民権に関する政策的均衡点を模索しているのである。 さらに、国家主権の衰退を引き起こす主要因は国際人権レジームだと主張されているにもかかわらず、レジームの国家に対する効果を説明する理論モデルが欠如していた。そこで本研究は国家社会化モデルをつくり、国家が人権を受容していく段階を識別できるようにした。すなわち、国家は少なくとも、以下の3段階を経て人権を受容していくのである。 [1]Repression / Denial [2]Tactical concessions / Prescriptive status [3]Rule-consistent behaviour そして国家社会化モデルの中に、段階間の移行には促進要因が必要とされることを明示したのである。 ただし、人権の受容が衰退概念で念意されるようなー方向的な主権の弱体化ではないことと明らかにされたものの、その理論化と実証は課題として残されている。また、国際人権レジーム以外にも「主権の衰退」を引き起こす要因はありうる。これらのことを勘案しながら、研究をさらに進展させなければならない。
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Research Products
(4 results)