2005 Fiscal Year Annual Research Report
リスク社会と道徳規範-社会と個人を「切る」社会学の可能性についての研究-
Project/Area Number |
17530364
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三上 剛史 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (80157453)
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Keywords | 社会 / 道徳 / 規範 / ポスト近代 / 公共性 |
Research Abstract |
本年度は「リスク社会と道徳規範」というテーマの基礎理論部分を固める作業を行っている。特に、古典的社会学成立期の「社会」概念について、多方面の文献・資料を参照することによって、「社会」概念がいかにして成立し、「個人」といかにして結び付けられてきたのかを検討している。 『身体の社会学』(2005年7月)所収の論文「身体論への知識社会学的断章-身体という場所」は、そのような作業の一環として、社会と個人を媒介する場所としての「身体」が、現代社会学の中でどのように捉えられ、また、近代社会の中でいかにして制度化されてきたかを知識社会学的に跡付けたものである。 これまでは道徳と公共性の方面から規範的社会理論の限界と可能性を問うてきたが、「身体」もまた現代社会特有の「境界線の引きなおし」に関わる重要項目であることが示された。 また、『現代社会学のすすめ』(2006年3月刊行予定)に収められた論文「ハーバーマスと公共性論の現在」では、H・アレント、J・ハーバーマスらの公共性論の現代的可能性と限界を整理し、「公共性」がもはや個人と社会の関係を担保しえない概念となりつつあることを示した。このことは同時に、「公共性」と「共同性」の吟味を通じて、社会学成立以来の大問題である「共同性とは何か」という本質的問題へと繋がってゆく。デュルケームの社会学では、共同性はまさに道徳理論の核心であったが、公共性概念の「ポスト近代」的ありかたを模索するとき、もはや従来の社会学で使い古された共同性概念では不十分であり、新しい形で個人と社会を関係付ける(or関係付け過ぎない)理論構成が求められることを明らかにした。 これに加えて、本年度末(3月末)には北京の人民大学において研究交流を行い。最近、情報化と消費社会化が目立つ中国において、リスクと道徳規範に関する理論的研究がどのような方向でなされているかについての情報を収集し、日本ならびに諸外国の研究動向と比較する。
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Research Products
(2 results)