2007 Fiscal Year Annual Research Report
リスク社会と道徳規範-社会と個人を「切る」社会学の可能性についての研究-
Project/Area Number |
17530364
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三上 剛史 Kobe University, 国際文化学研究科, 教授 (80157453)
|
Keywords | リスク / 連帯 / グローバル化 / 道徳 / 切りつつ結ぶ / ルーマン / フーコー / 社会的なもの |
Research Abstract |
本年度は、過去2年間の研究成果を、一定の形に理論化してまとめることを課題とした。 具体的には、下記研究発表に現れた4件の論文ならびに著書の形をとっている。中でも、『社会学評論』に寄稿した特集依頼論文「「社会的なもの」の純化か終焉か?-<連帯の喪失>とく道徳の迂回>:システム分化と統治性」は重要である。 ここでは、U.ベックらが唱える「社会の終焉」についての議論を、監視社会や道徳的連帯の変質・喪失に繋げ、F.エヴァルドなどのいわゆる「保険社会論」との関係を探り、これを、フーコー以来の統治性論へと拡大するものである。 更にその視点を、N.ルーマンのシステム分化と比較し、フーコー/ルーマンという理論的ネクサスを導入することによって、個人と社会とが「切れて」いるということの理論的構図を描こうとしたものである。 著書『社会調査と権力』に寄稿した論文「リスク社会と知の様式」は、以上の視点を、「リスク」認知という現象に特化して考察したものであり、また、論文「「切り」つつ「結ぶ」メディアとしての<愛>」は、ルーマンの『情熱としての愛』を題材として、現実に個人と社会が「切りつつ結ばれる」社会関係のありかたを、具体的ケースとして理論的に検討したものである。 以上の研究によって、来年度で終了する本研究テーマの結論について、一定の図式を獲得することができた。 なお、本年は、このような理論的研究と併せて、台湾大学に赴いてHsueh博士と研究上の交流を行った。
|