2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530381
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
樂木 章子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 講師 (00372871)
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Keywords | 養子縁組 / 特別養子縁組 / NPO環の会 / 産みの親との関係 / アジアにおける血縁なき親子 / 児童福祉 |
Research Abstract |
平成18年度は、NPO環の会の運営にかかわりつつ、「血のつながらない親子関係」を創る上で、育て親候補者の決断と覚悟を迫る最初のステップとなる「育て親研修」を見直した。育て親候補者となる夫婦の大半は、環の会の理念である「産みの親を尊重する姿勢」や「無条件で子どもを迎えることへの覚悟と決断」を要請され、そのことに対する理解を表明するものの、本書の部分では「健常の乳児」を望み、子どもを迎えることで幸せになれることを信じて疑わないことが見え隠れする。「乳児を迎えることは障害のリスクを背負うこと」「養育の途中で障害が明らかになる場合もあること」「(養子に限ったことではないが)健常児であっても、うまく育たず将来犯罪者となる可能性もあること」等を、具体例をふんだんにあげながら、強調していく形式をとった。現実に、そのような問題が会の中でも起こりつつあるからである。 環の会は、日本には見られないさまざまな新しい取り組みを実践してきたが、その一つが、「セミ・オープン・アダプション」という、産みの親と育て親家庭との関係が継続しうる形態を採っている点である。この「セミ・オープン・アダプション」がどのような形で実践されているのかについての質問紙調査を実施し、これを分析した。その結果、実際に産みの親と会ったことのある育て親は約6割に上るが、大半は子どもを迎える際に一度だけ会ったというものだった。子どもの養育後、手紙やプレゼントの交換など間接的に関わりをもつ家庭は多いが、子どもが成長し、産みの親と会うことのできたケースは極めて少ない。来年度は、実際に産みの親と出会うことのできた子どもや育て親に対するインタビューを実施し、産みの親の意向を重視した環の会のセミ・オープン・アダプションについての利点や問題点を検討したい。 また、今年度は、血のつながらない親子関係に関する日本の児童福祉制度を広く検討するために、アジア諸国において、その実態調査を開始した。具体的には、韓国、台湾、香港において、養子縁組や里親制度の現状やそのプロセス、問題点について関係機関を訪れ、ヒアリングを実施した。短期間であったためその全貌を明らかにしたとはいえないが、これらアジア諸国においては、政府機関と民間団体が互いにサポートし合う点が、日本とは大きく異なることがわかった。具体的には、民間団体が政府機関に対してシンクタンクとして機能していること、民間団体の中でもとりわけ実績のある団体が他の民間諸団体を統括し監視している体制が取られていること、とりわけ「子どもの命は国の責任」である姿勢が鮮明に出されている等、日本の児童福祉行政に欠落している点が浮き彫りになった。なお、アジア諸国のヒアリングについては、今年度より詳細なレポートを作成する予定である。
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Research Products
(3 results)