2005 Fiscal Year Annual Research Report
量的社会調査において測定行為が後の測定結果に及ぼす影響とその含意の研究
Project/Area Number |
17530397
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
山口 洋 佛教大学, 社会学部, 助教授 (00262543)
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Keywords | 社会調査法 / 社会学 / 認知科学 |
Research Abstract |
ある測定行為が後の関連する測定結果を変化させる現象(調査論で周知のキャリーオーバー効果等)は、測定の信頼性・妥当性評価の伝統的枠組と矛盾する。本研究は、この種の現象の結果、測定の「信頼性」「妥当性」が「自己発生」することを明らかにする。本年度の成果は以下の通りである。 第1に、過去の知見から上記の現象を大きく2つ(細かく3つ)に整理した。(1)信頼性の自己発生:一つの尺度を構成する質問項目群の内的一貫性が、キャリーオーバー効果により高まる場合(自己発生的一貫性)。また反復測定で、ある回の回答が次回の回答に影響を及ぼし、安定性が高まる場合(自己発生的安定性)。(2)妥当性の自己発生:行動の直接的観察の代替手段として近未来・仮想状況での行動意志が測定される場合、その妥当性の外的基準は行動そのものだが、意志の測定が測定結果に沿った行動を促すなら、妥当性は自己発生する(自己発生的予測妥当性)。 第2に、「自己発生的一貫性」「自己発生的予測妥当性」の独自の実例を提示すべく、予備的実験を実施した(本格的実験は来年度)。自己発生的一貫性の予備的実験は、Knowles(1988)の知見の追試である。ある人格テスト(内的外的統制尺度)の30項目をランダムラテン方格法で並べ替えて作成した30種類の質問紙を、90人の学生に配布したところ、後方の項目の得点ほど合計得点と強く関連していた。従って(実は自己発生的な)内的一貫性を基準に項目をふるいわければ、後方の項目ほど選ばれやすくなる。また自己発生的予測妥当性の予備的実験は、講義の受講生に対し、次回講義の出席意志の測定と実際の出席(妥当性基準)とを対照させる形で行ったが、妥当性の自己発生は起きていない。来年度の本格的実験の前に、自己発生が起きる条件をより明確化しておく必要がある。
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Research Products
(1 results)