Research Abstract |
平成18年度は以下の研究調査を行い,その一部を報告した。 【調査】 昨年度に引き続き,公立結核療養所所在地があった地方図書館,公文書館を中心に調査を行った。具体的には,広島,函館,宇都宮,静岡,京都,名古屋,新潟,神戸,長崎である。その結果,長崎を除いたすべての地方で,あらたに公立結核療養所を建設する際に反対運動があったことを確認した。特に,宇都宮では長期にわたる反対運動があったが,その経緯を詳細に知ることができた。これらの地方のなかで,調査未了の地域が神戸,静岡,横浜の三箇所である。この三地域について次年度は重点的に行う予定である。また,広島の反対運動の概要がおおよそまとまったので,研究紀要等に発表する予定である。 【論文】 今年度の調査の一部を次の論文に発表した。 ・『東横学園女子短期大学紀要』では,「健康」という語彙の歴史を結核療養の祖といわれる白隠禅師の人と思想を中心にまとめた。その結果,白隠やその弟子たちによって「健康」という語彙が使われるようになり,それまでの養心・主,養身・従の療養思想から,養身・主,養心・従という療養思想に変わったことが背景にあったことがわかった。 ・『日本教育政策学会年報』では,二十世紀初めにおける教員の結核対策についてまとめた。この時期は小学校教員に結核が蔓延し,政府は様々な対策に取り組んでいる。しかし,どの対策も大きな成果をあげることはなかった。理由は結核が蔓延した最大の原因が教員の劣悪な待遇にあるにもかかわらず,この待遇問題が改善されることはなかったからである。
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