2005 Fiscal Year Annual Research Report
ソーシャルワーク実践事例の多角的分析による固有性の可視化と存在価値の実証研究
Project/Area Number |
17530420
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
平塚 良子 大分大学, 福祉社会科学研究科, 教授 (40257556)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 美枝子 大分大学, 教育福祉科学部, 助教授 (90315309)
衣笠 一茂 大分大学, 教育福祉科学部, 助教授 (50321279)
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Keywords | ソーシャルワーク / 実践事例 / インタビュー(語り) / 多角的分析:7次元統合体 / 仮説生成 / 固有性の可視化 / 存在価値 / 実証研究 |
Research Abstract |
本年度研究では、15人のソーシャルワーカーによる実践事例提供(30事例集積)を受けると共にインタビューを実施し、これを分析した。対象となるソーシャルワーカーは、個別援助やマネジメント、地域社会対象の援助活動に従事する者、保健・医療領域や高齢者、障害者領域など多様である。本研究では、働きの場は異なるがこうした諸事例と語りとを一組として扱い、これをソーシャルワークの(1)価値・目的、(2)視点・対象認識、(3)機能・役割、(4)方法、(5)場と設定、(7)時間、(8)技能という仮説である7次元統合体モデルで分析を試みた。 ソーシャルワーカーの事例やその語りからは、統合体モデルに位置する利用者の生活事象を表象すると鍵となる概念をおおむね確認することができた。特にソーシャルワークの価値や視点等を反映するソーシャルワーカーの人間観・援助観と利用者という存在の側から発する内なる主観的論理とが交差されて、客体化が図られメッセージ化されたものとして援助行為や語りの中に認めることができた。「常識」や「世間」などからいうと「逸脱」にも見える利用者への「受容」「寛容」、半面「寛容的あきらめ」等の混在、自立や自助の困難度が高く生活破綻のリスクのおそれのある利用者の守護、彼らの意思に寄り添う「共感」「共苦」、「同労」、「弁護・権利擁護」、生活の時空と生活関係の交差する「生きる居場所の確保や創出」「見捨てのない姿勢」等々実践の価値的態度が共通して見出された。利用者のアセスメントを状況、規範、予測の3側面からの把握も認められた。これらから提供事例が本研究の仮説的な7次元統合体の枠組みの内にとどまることが確認でき、ソーシャルワークの可視化の可能性を見出すことができた。 課題としては、その論証とともに、これを裏付ける重要な語りからの仮説生成に関しては十分追究し得ておらず、固有性や存在価値を導き出す上でもさらなる分析が必要である。
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