2006 Fiscal Year Annual Research Report
退院促進事業による精神障害者の地域社会への参加可能性に関する行動計量学的研究
Project/Area Number |
17530426
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
金子 努 県立広島大学, 保健福祉学部・教授, 教授 (70316131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加茂 陽 県立広島大学, 保健福祉学部, 教授 (30099676)
中谷 隆 県立広島大学, 保健福祉学部, 教授 (40155875)
大下 由美 県立広島大学, 保健福祉学部, 講師 (00382367)
細羽 竜也 県立広島大学, 保健福祉学部, 講師 (40336912)
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Keywords | 退院促進支援事業 / 自立支援員 / 障害者自立支援法 / 社会的入院患者 / 不安解消 / 中間ケア / 生活の質 / 評価 |
Research Abstract |
本研究事業は平成17年度からの3年計画となっていたが、中間年と言うことで、初年度の研究事業の成果を広島県精神障害者退院促進支援事業自立促進支援協議会と共同して広島県精神障害者退院促進支援事業推進の手引書「これならできる!! 退院へのてびき」(平成18年8月発行)を作成した。手引書は、広島県内の関係機関はもとより、各都道府県の精神障害者退院促進支援事業主管課へ送付し、その成果を還元した。 また、平成18年4月の障害者自立支援法施行に伴い、精神障害者退院促進支援事業が都道府県の行う地域生活支援事業として位置付けられたことを受け、それまでの退院促進支援事業がどのように変化したかを調査した。この調査は、全国の主管課当てに実施し、各市町村の障害福祉計画との連携の実際や精神障害者が退院した後の生活支援を各市町村がどのように継続して実施しているかなどについて把握することを試みた。調査票の集計の中間まとめでは、各市町村との連携が十分図られておらず平成19年度以降の課題であること、国からの財源が限定的であることから都道府県としても長期的展望を持って行いづらいこと、そして精神科病院との連携の問題が挙げられていた。特に、精神科病院との連携については早急に解決しなければならない課題として挙げられていたが、まず退院促進支援事業の趣旨を理解してもらうのに苦慮している旨の回答が複数みられた。これは、従来、精神障害者の退院支援が各病院の裁量で行われていたものであり、それを外部から(特に行政から)の要請で行うことへの抵抗があるためと考えられる。さらにその背景には医療制度改革に伴う精神科病床再編に対する不安があるものと推察され、精神科病院への調査も今後必要と考えられる。 本年度の研究では、日本に先駆けて精神障害者の早期退院と不必要な入院の防止を取り組んでいる英国の中間ケア(Intermediate Care)に着目した。英国の中間ケアは、6週間の短期間、集中したリハビリテーションの介入を行うなどして地域社会での生活の継続を支援する取り組みであり、日本の退院促進支援事業に位置付けられている自立支援員に相当すると思われるソーシャル・インクルージョン・ワーカーなどの配置も行っている。この中間ケアは、急性期と長期療養期(ケアマネジメント)との中間に位置し、両者をつなぐものとして登場した。2001年以降政策的にも期待を受け推進されているが、日本の退院促進支援事業の今後の方向を考える上で示唆深いものととらえている。既に英国では、この中間ケアの評価研究が幾つか行われているが、中でもリーズ大学調査報告書にある医療モデルと社会モデルとの違いの指摘は、平成19年度の本研究事業で行う評価で参考にする予定である。
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Research Products
(3 results)