2006 Fiscal Year Annual Research Report
犯罪の被告と被害者の属性が裁判員の刑罰判断に及ぼす影響
Project/Area Number |
17530455
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
風間 文明 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 講師 (20276760)
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Keywords | 刑罰判断 / 被告の属性 / 裁判員 / 社会的地位 |
Research Abstract |
犯罪や逸脱行動に対する刑罰判断に影響を与える行為者と被害者の属性の中から、昨年度に引き続き、行為者の社会的地位に焦点を絞り、2つの調査を実施した。第1調査では意図的でない逸脱行動の事例を大学生の被験者に呈示し刑期の判断を求めた。これまでの研究では、行為者として2通りの職業を設定していたが、職業間には様々な質的差異が存在するため2職業の比較だけでは不十分だと考えられる。そこで社会的地位の異なる複数の職業として、医師、パイロット、教師、書店の店主、道路工夫の5種類を設定し、それぞれが行為者であったときの刑期の長さを比較した。その結果、パイロットと道路工夫の間に有意な差がみられ、パイロットの方が道路工夫よりも課される刑期が長かった。第1調査の対象者は大学生であったため、職業についての知識が乏しいことが結果に影響している可能性も考えられる。また裁判員制度を念頭におくと、一般社会人の判断傾向も知る必要がある。そこで埼玉県新座市内から無作為抽出した一般社会人を対象に、第2調査を行った。第1調査を修正し、主人公が過失から相手を死なせてしまう2つの事例について刑期の判断を求めた。行為者として、医師、パイロット、書店の店主、道路工事作業員の4職業を設定した。その結果、刑期の長さに対する行為者の社会的地位の効果はみられなかった。しかし「行為者に対する非難の感情」において、パイロットよりも道路工事作業員に対して、より強い非難の感情を覚えるという有意差がみられた。この結果は、法的知識をもたない一般の人が裁判員となった場合、感情的な判断をすることが多いのではないかという危惧に対して、非難感情が直接刑期の長さに反映されるわけではないことを示唆している。刑期判断に及ぼす行為者の社会的地位の効果については、研究によって結果が一貫しなかったため今後の検討が必要である。第1調査の結果を日本心理学会で報告した。
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Research Products
(1 results)