2005 Fiscal Year Annual Research Report
社会変動と生涯発達-ハンセン病元患者の生涯の生態学的分析-
Project/Area Number |
17530468
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊池 武剋 東北大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (90004085)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 道代 東北大学, 大学院・教育学研究科, 助教授 (60312526)
沼山 博 仙台白百合女子大学, 人間学部, 助教授 (00285678)
福島 朋子 いわき明星大学, 人文学部, 助教授 (10285687)
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Keywords | 生涯発達 / 社会・文化 / ハンセン病 / 自伝分析 / 語り聞き / 面接調査 / 生態学的分析 / ブロンフェンブレンナー |
Research Abstract |
本研究は、ハンセン病元患者の自伝や語り聞きなどの一次資料を再検討し、これと並行して面接調査等を行うことで、彼らの生涯を、昭和初期から現在に至るまでの社会・文化的変動と関連づけて記述し、それらの相互作用の変遷という形で彼らの生涯発達の過程を明らかにすることを目的としている。この目的に即して、今年度は2名のハンセン病施設入所者を対象に詳細な分析を行い、入所者の生涯と社会・文化的変動との関連について暫定的な図式化を行った。概略は次の通りである。 (1)彼らが入所した第2次大戦前後は施設内も例に漏れず食糧難であり、かつ監視等が最も厳しかった。入所者の生存率も高くはなく、「生きながらえる」ことが、彼らの最大の関心事であり、死の恐怖と向き合いつつ、食料等の自給自足のための労働に従事した。 (2)戦後プロミン治療が開始され、死の恐怖から解放され、いかに生きるべきかが入所者の大きな関心事となった。後遺症の軽い者は退所したが、自身もしくは配偶者の後遺症が重い場合は施設への定着を余儀なくされた。定着した入所者は、(1)戦後の民主化を受けて人権意識に目覚め、施設の民主化と待遇の改善を求めて自治会等の対外的な活動をする者、(2)施設内で認められていた宗教活動に従事して内なる平安を求める者、(3)施設内で推奨されていた文芸活動等に従事しそれを通して自己をみつめ対外的なかかわりを持とうとする者の3つに大別できる。このいずれになるかは、まず後遺症の程度に依存していると考えられるが、それ以外にも入所者自身の状況認識や、施設内外の仲間の存在等も関連すると推測される。
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Research Products
(2 results)