2007 Fiscal Year Annual Research Report
チンパンジーの母子相互作用と社会性の発達-動物園飼育下における事例研究-
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17530486
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
柿沼 美紀 Nippon Veterinary and Life Science University, 獣医学部, 教授 (00328882)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上村 佳世子 文京学院大学, 人間学部, 教授 (70213395)
畠山 仁 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (30350177)
土田 あさみ 東京農業大学, 農学部, 講師 (60439891)
濱野 佐代子 ヤマザキ動物看護短期大学, 動物看護学科, 講師 (90413137)
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Keywords | チンパンジー / 子育て困難 / 飼育下 / 道具使用 / 利き手 / 早期離乳 / 社会的隔離 |
Research Abstract |
今年度は観察データをもとに1)チンパンジーの道具使用の発達及び、2)GAINデータベースを参考に、日本の飼育下チンパンジーの出産状況、育児困難、人工哺育の関連について検討を行った。 多摩動物公園のチンパンジーを対象に道具使用の発達について検討をかさねた。特に探索活動レベルとの関係及び、利き手との関連に焦点をあてた。探索活動レベルは子どもの道具使用の開始期時期を早めていたが、実際の技術獲得時期には影響を及ぼしていなかった。道具使用開始時期と利き手の関連では、右手で道具を操作する個体に早い傾向が見られた。ヒトの場合、右利きが多く、この比率は道具使用と関連があると指摘されている。チンパンジーの場合は多少右利きが多いとされているが、これまで道具使用との関連についての報告はない。事例数が限られているため、今後は他施設を含めて検証を行う必要がある。 飼育下チンパンジーの育児困難についてはこれまでのも指摘され、その要因として早期母子分離、社会的隔離などがあげられていた。国内で飼育されている個体の出産状況を見ると、アフリカ由来(一般的に早期離乳及び社会的隔離を経験している)個体と国内由来(比較的安定した子ども期を過ごしている)では、育児の成功率に差は見られなかった。飼育者の介添え、補助などによりいったんは子育てを放棄した個体が授乳に成功する例がある一方で、乳汁分泌不足で人工哺育に至る例など、複数の要因が背景にあるようだ。多摩動物公園の事例からは、出産間隔の短さも子どもの子育て困難と関連している可能性も伺えた。子育て困難の背景には、早期母子分離、社会的隔離以外の要因があると考えられ、その結果ホルモンバランスにまで影響が出ている可能性も否定できない。今後は実験動物を用いた研究も含めて子育て困難について検討を重ね,絶滅危惧種であるチンパンジーのより安定した繁殖環境を確保する事が望まれる。
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Research Products
(3 results)