2006 Fiscal Year Annual Research Report
幼児期の心理的ストレスを軽減する楽観性の研究-弾力性と非現実性の検討-
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17530494
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
小花和 Wright 尚子 武庫川女子大学, 文学部, 助教授 (80249424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河合 優年 武庫川女子大学, 教育研究所, 教授 (00144098)
山本 初実 三重中央医療センター, 臨床研究部, 部長 (90416199)
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Keywords | 幼児期の楽観性 / 唾液中αアミラーゼ / 帰属・認知スタイル |
Research Abstract |
本研究では,楽観性を「将来を肯定的に期待し,望ましくない出来事を外的,一時的,特異的原因に帰属させる姿勢」ととらえ,1)児童期の調査結果との比較を通じた幼児期の楽観性の把握,2)心理的ストレス場面での幼児の生理的ストレス反応測定から幼児の楽観性がもつ弾力性と非現実性の明確化,という2点を目的とした。平成17年度には,4歳・5歳児を対象として,日常生活での成功と失敗に対する帰属・認知スタイル,および特定の保育場面における感情反応を個別に聞き取った。さらに,登園後(平静時),聞き取り調査に使用した特定の保育場面の直前(緊張時),直後(解放時)の3回について,唾液中αアミラーゼを簡易ストレスモニター(ヤマハ発動機α-Amy)で測定した。幼児の保護者には,幼児の楽観性および日常生活での帰属・認知スタイルに関する質問紙を配付・回収した。なお,これらの調査については,あらかじめ幼児の保護者に書面で承諾を得た。調査の結果,次の3点が明らかとなった。(1)4歳児よりも5歳児には楽観性の低い子どもが多く,認知能力や思考能力の発達にともない,子どもは現実的になる。5歳時には,すでに現実的ではあるが楽観的ではない将来への見通しをもつ子どもや,自己の能力について悲観的な見通しをもつ子どもが少なくない,(2)楽観性が低い幼児は唾液中αアミラーゼ値が高い傾向にあり,生理的に強いストレスを感じている状態にある,(3)楽観性が低い子どもの養育者は,自分の子どもの楽観性を非現実的に高く評価する。平成18年度には,保護者から質問紙調査結果が得られた小学2年生を対象として同様の調査を行った。その結果,成功事例よりも失敗事例において悲観的な帰属スタイルをもつ子どもが多く,幼児と同様に失敗事例において悲観性が高い子どもは唾液中αアミラーゼ値が高い傾向にあり,その養育者は自分の子どもの楽観性を非現実的に高く評価することが示された。
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