Research Abstract |
非行少年の「行動化」,特に心理的援助過程開始後の再非行等の「行動化」の治療的理解のために,平成17年度の研究を踏まえ,以下の研究を行った。 1.Freud, Klein, Winnicottの理論の詳細な考察を踏まえ,二者関係段階での心理的問題を抱えた非行少年に対する心理援助者のあり方の仮説的主張を提示し,非行臨床における自験例の分析を通して,その妥当性を検証した。 2.非行臨床は「強いられた関係」であるが,少年の再非行等の問題行動は,「強いられた」virtualな関係である非行臨床の援助関係に,動かしがたいrealityをもたらし,援助者・少年双方が取り組まなければならない治療的課題を明らかにするという極めて重要な意味をもたらすことを,自験例の分析を通して明らかにした。 3.広汎性発達障害を背景にもつ非行少年の事例を緻密に考察し,非行臨床の基本的属性である権力構造が果たす治療的機能を明らかにした。 4.学校教師へのコンサルテーション事例と教師がロールプレイ法を通して生徒理解を模索した事例の分析を通して,生徒理解における,二者関係段階の理論を含めた精神発達論の有効性を明らかにし,教師への援助者の置くべき視点は「教師だからこそできること」(近藤,2002)にあることを指摘した。 5.学校教師への質問紙調査を通して,およそ20年前に比べ,非行等の問題行動をもつ生徒の数は減少しているものの,現在,教師が対応に困難を感じる生徒は,二者関係を希求する生徒と基本的生活習慣の獲得が不十分な生徒であることを示し,心的発達論を踏まえた生徒理解の重要性を指摘した。 6.非行と関連の深い児童虐待に関して,主に1990年代の問題について,「子どもの危機的状況」という視点から心理社会的分析を行った。
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