2006 Fiscal Year Annual Research Report
元ハンセン病患者のスティグマと喪失体験に関する研究
Project/Area Number |
17530507
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
播磨 俊子 神戸大学, 総合人間科学研究科, 教授 (80125195)
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Keywords | ハンセン病 / 喪失体験 / スティグマ |
Research Abstract |
今年度は文献資料の検討とともに、全国13療養所のうち初年度訪問できなかった2園を訪問し、さらにこれまでの訪問で面識を得、再面談の承諾を得られた入所者との面談を含む再訪問を数園について行った。その際、可能な限り園内に宿泊させてもらい交流を深めるとともに生活の場としての療養所について体験的に理解を深めることとした。またハンセン病問題検証会議の委員との面談を得、入所者の高齢化と入所者数減少の現状に関わった療養所の将来計画等についてさまざまな角度からの課題を検討した。 面談内容や資料から学びながら以下のような点を中心に検討した。 1.喪失感は共通に体験されているが、その内容は各人に固有である。すなわち喪失感に影響を及ぼす共通の要因としてたとえば入所前の生活・入所時の状況・病の進行程度・家族とのつながり・外部とのつながりなどが重要と考えられるが、喪失体験自体は各人に固有の体験であり、その意味を考える上では固有性にどう向合えるかが問われる。 また以下の1)2)の差異は、少なくとも入所初期において療養所生活を受けとめる上で大きな影響をもたらしたと思われる。1)プロミン以前と以降 2)家族・親族がすでに入所もしくは同時入所 2.喪失とスティグマについて、北条民雄、松山くにの作品と子ども・思春期時代から大人になる時期を経た入所者語りを検討しながら、思春期青年期のアイデンティティ形成の課題との関係において検討。 3.人生最終版の時期であることを自覚している多くの入所者にとって、自分の人生を振り返り語ることは、被害者としてだけではない自分という存在の意味あるいは人生の意味の確認として営みでもある。 そうした点を踏まえながら、喪失体験とスティグマについて検討。
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