2006 Fiscal Year Annual Research Report
高機能広汎性発達障害児者の自己意識に関する基礎的研究
Project/Area Number |
17530509
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
木谷 秀勝 山口大学, 教育学部, 助教授 (50225083)
|
Keywords | 高機能広汎性発達障害 / 高機能自閉症 / アスペルガー症候群 / 高機能広汎性発達障害者の自己意識 / 高機能広汎性発達障害者のWAIS-III / ○△□物語法 / 成人期の高機能広汎性発達障害 |
Research Abstract |
1.目的:今年度は高機能広汎性発達障害(以下、HFPDD)者の自己意識に関する調査を目的として、2つの視点からアプローチする。(1)「自己意識」の3側面の分析:自己がもつ一貫性・恒常性を測定するために知能検査(WAIS-III)を、自己がもつ環境への能動的な操作・制御(想像性と関連して)を測定するために臨床描画法(○△□物語法、人物画)を、そして自己と他者との実感を伴った情緒的共有性を測定するために投影法(TATとナラティブ面接)を実施する。(2)「自己意識」の発達的変化:HFPDD者を高校1年〜3年、18〜22才、そして成人(23才以降)の3群による発達的変化を検討する。 2.結果と考察:HFPDD者17名(16歳〜40歳、男性12名、女性5名)を分析する。WAIS-III(平均FIQ=99.8(全体IQの範囲は75-125)、言語性IQ≧81)では、高校・大学でIQ=85以上で環境が安定すれば、適応も維持できる。しかし、成人後の安定では100以上が必要となる。○△□物語法では、社会適応に柔軟さが出てくるIV段階以降の伸びが成人後も1名で、想像性の障害の困難さが理解できる。人物画では、22才までは「頑張る」ための葛藤が高いが、成人後は自分のペースを維持できれば安定に向かう傾向がある。TATでは、IQや年齢に関係なく、主観的な反応や過去の外傷体験が賦活されやすい。そして、ナラティブ面接では、22才までは自己評価として両価・葛藤状態が強く、特に18才以降は自我同一性の問題と直面しやすい。しかし、安定した生活環境であれば、成人後の現実の自己評価は安定する。以上から、HFPDD者の自己意識の特徴として、22才までは社会参加の拡大とともに不安や葛藤が強くなりやすく、背景には、HFPDD者の基本的な障害特徴の改善の困難さが大きい。一方、成人後は自己意識の安定した状態が維持されるが、そこにはHFPDD者としての「自分らしさ」を大切にした生き方が重要であることが理解できる。
|
Research Products
(3 results)